SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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震える天秤

[著者:染井為人/KADOKAWA]

 主人公の俊藤律、フリージャーナリストの立場にしては、本来彼とは無関係の事件にあまりに深入りし過ぎではないか。これなら『担当刑事が事件に違和感を覚えて捜査に踏み込む』みたいな立場の方が、もしかしたらしっくり来ていたかも知れない。

 実際に俊藤は越権行為が過ぎると言うか、己の性質だとか信念に基づいてだとか言うものの、あくまで無関係な一介の記者がそこまで次々に手掛かりを掴めるものなのか、という不自然さがあったのも正直な所だったので。

 でも、この物語の結末に至った時点で「なるほど警察関係者の立場ではこの選択は辿れないな」と。俊藤が『無関係な立場の記者』だったらこそ下せた決断とも言える所に、充分な納得感が得られたように思いました。