SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

数字で救う! 弱小国家 電卓で戦争する方法を求めよ。ただし敵は剣と火薬で武装しているものとする。

[著者:長田信織/イラスト:紅緒/電撃文庫]★★

 読んでいる最中で、数学計算に特にとっつき難い印象は抱きませんでした。むしろ多少複雑になりそうな部分では理解し易いような描写を心掛け、物語の盛り上げに充分貢献するようしっかり考えて盛り込まれていると感じられました。特に『囚人のジレンマ』の要素は図解含めてとても面白かったです。

 感情的な部分では、正否はともかく割と感情論や現場主義推しのウィスカー侯爵辺りに同調したくなったりも。要は数学だけでそんなに計算通り事が運ぶものか? と言う疑問です。もっとも、それをナオキが充分心得ているのはよく分かるし、決して依存による過信も奢りもなく、その上で自信を持って知識を振るっているから説得力があるんですよね。

霊感少女は箱の中2

[著者:甲田学人/イラスト:ふゆの春秋電撃文庫]★★

 最後に友達の為を思っての感情を吐露してめだて
しめでたし……とは行かないのがなかなか嫌らしい
所ですね。一人交霊術を行ったせいで『憑依』され
てしまった人格の謎をどう解くかが見物でしたが、
実はその前提がそもそも違っていて、外から乗っ取
られたのではなく偶発的に自らの内で形成されたっ
て感じでしたかね。鬱積していた願望が表層化して
別人格が生まれてしまったような。語られた後に成
る程と納得しつつ頷いてましたが、茜の漏らした本
音はなかなかにエグいもので、でも彼女の積み重ね
を見た後だと何となく分かるような気もしました。
 『柩』について更に踏み込んだ内容で、今後所有
権争いでも起こりそうな雰囲気ですがどうなるか。

既刊感想:

霊感少女は箱の中

[著者:甲田学人/イラスト:ふゆの春秋電撃文庫]★★

 最初の発端から持ち続けていた「何故こうなった
のか?」の疑問に対して、最後の最後に明確な解が
得られたので少しホッとしました。もしもこれが曖
昧なままだと、スッキリしないもやもやな空気を多
量に抱えたままになってしまいそうだったので。
 一方で、自虐でも卑下でも何でもなく、本当の本
当に瞳佳の言葉通りに彼女が原因を持ち合せていた
事。そして端を発していた事については、ちょっと
遣り切れないなって気持ちもありました。持ち掛け
たのは夕奈達四人だったとしても、そこに瞳佳が居
なければ、おそらく心霊現象的な何かは起こり得な
かったわけですからね。瞳佳自身が呪縛から逃れる
術が無い限り、これはどうにもならなさそうです。

俺を好きなのはお前だけかよ6

[著者:駱駝/イラスト:ブリキ/電撃文庫]★★★

俺を好きなのはお前だけかよ(6) (電撃文庫)

俺を好きなのはお前だけかよ(6) (電撃文庫)

 16頁~17頁の台詞の仕掛けには、読んでいて
気付かされた瞬間、無意識に「すげえな……」って
声が漏れていました。若干無理はあるにしても、ほ
ぼ違和感無くやってのけて、わざわざ読み手を誘導
して気付かせる辺りとかも。いやホントすげえよ。
 あとは「はいはいリア充リア充」とか冷めた目で
ジョーロを眺めつつ、意外なキャラの台頭に驚きつ
つ、最後は「あぁこう纏めて来るのか~」と仕掛け
の巧さに感嘆とさせられました。メインイベントの
数々にも、幕間のそれぞれの日常エピソードにも、
明確な意味を持たせるような描き方は凄いなあと。
 で、最後に「何でこうなった?」なのですが、関
連性も薄いですし、サッパリ予想つかないですね。

既刊感想:

賭博師は祈らない2

[著者:周藤蓮/イラスト:ニリツ/電撃文庫]★★★

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

 ラザルスの心の底からの「どうでもいい」は、彼
にとってこれ以上ない位“どうでもよくない事”だ
と言うのがよーく分かる内容でした。そうやって声
に出して発している事自体、本当は無関心でいられ
ないと言ってるようなもんですよね。おそらくラザ
ルスにも自覚はあるんでしょうけど。今回はリーラ
と自身の気持ちを放っておかず、ちゃんと彼女と真
剣に向き合ってくれた事、凄く嬉しく思いました。
 あとは序盤での何気ない台詞、『踏める限りの正
当な手段を踏め』が終盤で非常に大きな意味に変化
する展開が堪らなく良かったですね。「ここに掛か
って来るのか!」という感じで。重要なものが掛か
った緊張感溢れる賭博勝負も見応え充分でした。

既刊感想: