SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

熊本くんの本棚 ゲイ彼と私とカレーライス

[著者:キタハラ/イラスト:慧子/KADOKAWA]★★

ガチゲイ
 割とがっつり、ヤるとこまでヤっている。熊本くんはノンケで、周囲がゲイだらけでゲイに好かれてゲイに引き摺り込まれる、みたいな? でも嫌がってはいないから、熊本くんの“本質”は“そっち”だったのか?

勝手に予言された死を突破する為に
 『普段自分が決してやらない行為』=『ゲイ向けのDVD出演』で、そこに自分の身を委ねなければならなかったのかどうか。自主的に、望んで、なので熊本くんを通しての忌避感は意外に抱かなかった。

『さよなら、けだもの流星群』
 どこまでが熊本くんの創作で、どこからが実体験の現実なのか? オカルト、ホラーも入り乱れて最後の方はちょっと見失ってしまいました。そうなるよう意図的に仕組んでいたようにも見えたけれど……。

最後に熊本くんの手を握ってくれたのは?
 ここも読み返しても「ハッキリとは分からなかった」でした。あえて曖昧にしてるいる風なので、自分でそうだと思った人物を、口には出さずそっと心の中に浮かべる程度が丁度良いのかな。

茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず

[著者:石田リンネ/イラスト:Izumi/ビーズログ文庫]★★

ちょっと物覚えがいい
 の“ちょっと”とは、茉莉花基準でどれくらい“ちょっと”なんだ? と、ちょっと問い掛けたくなった。過去に期待を裏切ってしまった負い目、自身を過小評価で縮こまってしまっている、か。

超記憶力
 インプットが天才的、アウトプットが壊滅的。才能を伸ばす方向さえ間違えなければ、どんどん成長して行く。茉莉花が徐々に自信を持ち合わせて行く様子が際立っていて印象的でした。

女官と皇帝陛下
 最初から好意を抱いているのでも惹かれているのでもないので、まだ『身分違いの恋愛』という雰囲気ではないのかな? 互いに意識し合っているのは確かなので、どんな風に育ってゆくのか楽しみ。

晧茉莉花の官吏としての一生
 それこそが『茉莉花官吏伝』であり、白楼国の女性官吏の先駆けとして語り継がれて行く。こういう扱いにぐっと来ました。『茉莉花』がやがて『立身出世』の意味を持つようになる、と言う辺りも茉莉花の“象徴”が際立つ印象で凄く良いですよね。

スキルが強すぎてヒロインになれません

[著者:奏中カナ/イラスト:hi8mugi/アイリスNEO]★★

護れるけど護られたい乙女ゴコロ
 高遠君はそんなの気にしないよ~、ってアリアに言った所で「あたしが気にするっ!」と返されるに違いない。いくら取り繕った所で、こんな四六時中一緒に居たらあっさりバレるに決まってるでしょう。

高遠君だって完璧人間じゃない
 彼自身からそう言ってくれて「ああ、確かにね」って気付けたり。アリア視線だと好意的感情優先で「カッコイイ!」にしかならないんだもん。でも、徐々に互いに素が出せるようになって行く描写が凄く良かったですね。

アリアよりも気になるのはむしろ……
 高遠君の感情の方。彼自身は整理つかなくて戸惑ってるみたいだけど、間違いなくアリアの事好きだよね。“他の男”がアリアに近付くと露骨に不機嫌になってるし。分かり易過ぎるアリアより、そういう所に一番ニヤニヤさせられたかも。

恋愛模様と力関係
 恋愛の方は、高遠君がハッキリ自覚するかどうかで雰囲気が変化して行くのかなあ。力関係は、どっちも強さは規格外なので“互いに護り合う”みたいに続いて行くのかな。高遠君は「護りたい」、アリアは「護られたい」気持ちが強そうですけどね。

夏へのトンネル、さよならの出口

[著者:八目迷/イラスト:くっか/ガガガ文庫]★★★

第13回小学館ライトノベル大賞『ガガガ賞』&『審査員特別賞』受賞作
 「そのトンネルを潜れば失ったものを取り戻せる、ただし自分の老化と引き換えに」。そんな噂を耳にした塔野カオル。喪った妹のカレンを取り戻そうと、ある日偶然見つけてしまったその『ウラシマトンネル』を、転校生の花城あんずと調査する事にしたのだが……。

人の死なんて案外呆気ないもの
 として描かれていたカレンの死因。それは不運としか言い様が無く、悔やむ事も憐れむ気持ちも抱き辛くて。しかしカオルは“自分のせい”だと重く背負い続けている。だからこそ、代償を支払ってでも「取り戻したい」と強く願ってしまう。

『時間の経過が異なる』と見事に立証しながらも
 それがどんなに危険で、多大な“時間と言う代償”を支払う行為だとしても、カオルがトンネルの先へ進む事は誰にも止められない。違う時間の流れの中で、ただ好きな人を待つしかない、あんずの想いが辛く苦しく圧し掛かる。

どうか幸せな結末を
 トンネルに引き摺られてカレンと過ごして終えるのか? それとも現実へ生還出来るのか? あんずは待ち続けているのか? 終盤までは結末がどこにでも転がりそうだったので、本当に祈るような気持ちでカオルの動向を見守っていました。

どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。1

[著者:六つ花えいこ/イラスト:vient/Mノベルスf]★★★

偶然の積み重ねが運命に変わる
 最初のロゼとハリージュって、実は直接的な面識が全くなかったんですよ……って読了後の自分に言ったら「嘘だろ?」って、絶対信じてもらえない自信があります! 

両方から悶えさせまくる
 ロゼ側の感情だけでなく、ハリージュ側からの感情もグイグイ迫って来る。物語を追っていると、気付いた時に両方の想いを自然に感じ取れるようになっている。その辺りの描き方がとても巧いですよね。

惚れ薬の威力
 ロゼもハリージュも、自分の為に欲してるんじゃないのに、二人共惚れ薬の効果を同じように喰らってる。最初からの『好き』を何倍も濃くしたような『好き』は、凄まじい破壊力で悶絶させられました。

今後の展開は?
 何か惚れ薬の影響なのか、吹っ切れたハリージュがグイグイ。ロゼが押されてタジタジ(でもそんな状況が溜まらなく大好き!)。一体どんな展開で、どこまで悶えさせてくれるでしょうか。