SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

トンデモワンダーズ 下 <カラス編>

[著者:人間六度/企画・原案:sasakure.UK/メディアワークス文庫]

 自身がプログラムであり、その役割と存在意義をついに知った少女は、作られた世界でたったひとり現実と繋がる少年の心を救う事が出来るのか?

 上巻ではテラの行動と心の動きが主だったのに対して、この下巻はカラス=天島月彦の現実世界での状態、過去の父との確執、治療世界における存在と心の葛藤や揺れ動きなどが主に描かれています。

 もちろんそれだけでなく、存在理由を確信してどうにかカラスの心を救いたいと願う、テラの彼女らしい無茶通しな奮闘ぶりも大いに盛り上がを見せるひとつです。

 『プログラム』と『人間』……月彦が現実世界に戻れば決して共存する事は出来ない二人。どんな結末を遂げるのかと興味と不安交じりで追い続けていました。

 個人的には本当に大満足な結末のラストシーンで。最後の最後に『歌ってみる』で締める辺りは、何となく原作を意識されているかのような素晴らしい演出だなあと思いました。

トンデモワンダーズ 上 <テラ編>

[著者:人間六度/企画・原案:sasakure.UK/メディアワークス文庫]

 あちこち飛び交う多種多様な謎の物体『ワンダー』。いつも建設中で一向に完成しない世界のシンボルの『巨塔』。自分の存在意義を見出せず流されるように日々を無気力に生きる少女『テラ』。ヘンテコな世界でヘンテコな物体を狩り続ける“ゲーム”を独りでやっている少年『カラス』。

 不可思議な世界は果たして現実か? それとも仮想現実か? 虚構か? 創造物なのか? ゲームの中のような、異世界のような、でもそんな事はあまり深く考えずにテラとカラスは出会ってゲームを共にして絆を深めて行く。

 でも、目を背けていた『世界の真実』をテラが知らされる事で、物語は大きく変化を遂げて行く。気になっていた事、疑問に感じていた事、色々と含めて「なるほど」と納得するも、今度はテラとカラスの関係はどうなってしまうのだろうか……と言う不安がにわかに沸き上がる。決して“相容れない存在”同士の二人の行く先は、果たしてどうなるのか。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部 領主の養女V

[著者:香月美夜/イラスト:椎名優/TOブックス]

 第三部完結編。物語の節目に大体良くも悪くも大きな出来事が待ち構えていて、今回もまた想像を超える事態がローゼマインの身に降りかかる事に。ヴィルフリードの愚かな行為や、ローゼマインとシャルロットの誘拐や、そこに繋がる黒幕らしきゲオルギーネの存在など、幾つも不穏な気配はありました。

 が、ローゼマインの身に起こった事は、それよりももっとずっと予想外で「えええーーっ!?」みたいな驚きの声が上がるような展開で。確かに事前にフェルディナンドから『身体根治の薬を飲むと一定の休眠期間が発生する』とは言われていたけれど、まさかここまで……だったとはねえ。

 その『休眠期間』が明けた直後で第三部終了となったので、その後の様子など詳細はまだよく分からない。ただ、『貴族院入学に間に合った』とフェルディナンドが言っているので、次は貴族院生活がメインになるんでしょうかね。まあその前にローゼンマインは色々と“おいて行かれている状態”なので、現状把握と遅れを取り戻す事が先決なのかも。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部 領主の養女IV

[著者:香月美夜/イラスト:椎名優/TOブックス]

 なんか当たり前のように紙製作技術と印刷技術が日々向上を続けていて、気が付けば当たり前に『本製作』が順調に軌道に乗っている事が日常的になっていて、ふと気付いてようやく「あっ!」と驚かされてしまう。

 初期の頃は手掛かりが少なく、試行錯誤の連続で、さらにマイン自身が虚弱でまともに動ける状態じゃなかった。この辺りの様子を思い返すと、「よくここまで来たもんだなあ」と思わず感慨にひたってしまいます。ただ、これでもまだローゼマインにとっては発展途上段階で、このままどこまで極めて行くのか興味深く楽しみな所ですよね。

 領主の養女、上級貴族、神殿長、など何足も草鞋を履きながら日々奮闘しているローゼマインに対して、どうにもキナ臭い不穏な動きが見え始めて来たのが今回の終盤での出来事。

 どうにもジルヴェスターが領主として弱腰なのが頼りなくて、不安を助長させてしまうんですよね。まあ状況を考えると仕方のない事なんですが……どうか醜い嫉妬や復讐心や権力欲がローゼマインを貶めるような事態になりませんように。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部 領主の養女III

[著者:香月美夜/イラスト:椎名優/TOブックス]

 どうやらこの第三部の終着点は、『ローゼマインの体内の異常を完治させる』所に定まりつつあるような感じ。

 そもそもフェルディナンドがローゼマインの身体の異常を察知したのが始まりだったはずで、では何故彼女の異常を完治させる必要性があるのかと改めて考えてみると、「そういや何でだっけ?」ってなったりしてました。

 今は素材採集を無事に成功させる事に注力していて、目的そのものがなんだったのかフェルディナンドに確認し難い状況なのかなあなんて思ったりも。

 完治すれば多分ローゼマインの虚弱体質も改善されるはずで、じゃあ何故彼女をそういう状態にさせたいのか、と結局ここに戻ってしまうわけですね。

 まあこちらがフェルディナンドの目的を忘れているだけかも知れませんが、素材採集が大詰めを迎える頃に、また改めてローゼマインの道標が知らされる事になるのでしょうかね。