SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

SHI−NO ―シノ― 夢の最果て

[著者:上月雨音/イラスト:東条さかな/富士見ミステリー文庫]★

 シリーズ第7巻。今回のは、真犯人が辿った人生と、その真相を知った自分(僕)の人生とを照らし合わせる意味で描かれた事件だったのか? 被害者や犯人から見れば、僕や志乃やキララ先輩との接点は無いので、言わば部外者的立場からの介入。じゃあ何で部外者が介入したの? って理由があんまり無くて比較的弱目だったから、事件や謎解きとしての興味は得られても、「SHI−NO」というシリーズとしての旨味はちと薄味だったのかなぁと。

 ぶっちゃけると「これ、別にSHI−NOでなくてもいいじゃん」となる訳で。結局、理由は志乃が事件――それもどす黒く凶悪な事件であればある程引き込まれ易い体質である、という一点に尽きるのか。

 第三者の立場だったからこそ「罪を背負う義務がある」と突き付ける志乃に対し、「君にそれを言う権利があるのか?」と思わず問い返したくなった今回の事。でも、もしかしたらまだ見えない志乃の内面の『闇』に、相手を完膚なきまでに叩き落とす行為にも納得出来るだけの“何か”が潜んでいるのかも知れない。それを暴く事は非常に危険な気もするのだけれど、僕が志乃に近付けば近付く程に露呈して行きそうで怖いな……。

既刊感想:黒き魂の少女
     アリスの子守唄
     天使と悪魔
     愛の証明
     呪いは五つの穴にある
     支倉志乃の敗北