[著者:緑青・薄浅黄/イラスト:sime/ドラゴンノベルス]
病弱なまま現世を去り、勇者として異世界召喚された二度目も病弱で死と隣り合う人生。主人公・刹那の境遇で一番きついのは「なんで僕ばかりこんな目に……」と、憤りの感情をあらわにする気力すら最初から備わっていない所。寝たきりのまま、いつ命が尽きてもおかしくない状況が延々と続いて行く。まさに生き地獄。
そんな刹那の『三度目の人生』の物語。“三度目の正直”という表現が、こんなにもしっくりくる物語はないなと思いました。それ程、これまでの刹那=セツナが報われなさ過ぎだったと言う事でしょうかね。
新たなセツナの人生の出発点は、過去の勇者・カイルの『能力譲渡による継承』みたいな感じでした。この辺は、ちょっと不明点もあったりするんですよね。そもそもカイルの過去自体が結構謎に包まれているので。どうやら何らかの『条件』を満たすまでは、セツナにも覗けないような仕組みになっているらしいです。
この、セツナがかつての“勇者の過去”を紐解く事が、あるいは物語の謎を解く鍵になって行くのかも知れません。特にこの世界と『転生勇者』との関りについては、結構キナ臭い雰囲気もあるので気になる所です。まあ、セツナにはあまり関わって欲しくない気持ちが大きいですけどね。