SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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魔王学院の不適合者8 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~

[著者:秋/イラスト:しずまよしのり/電撃文庫]★

 今回のラストシーン、個人的にはシリーズ史上最高のシーンだと思いました。ただひたすらアノスが凄かった。そして二千年前から現在まで、アノスの導き手として、あるいは支え役として、彼の進む道を照らし続けてくれている『父親』たちの存在は偉大でした。

 これまで失われていたアノスの記憶が、今回の話の中でほぼ明らかにされています。前回で滅ぼした、アノスの父親と名乗っていたセリスとの不鮮明な関係性についても、完全に解き明かされていました。

 滅ぼしたはずなのに、二千年前の記憶にやたらセリスの存在感が大きかったので、裏があるのかなと考えてはいましたが。意外であり複雑であり衝撃的でもあった、と言うべきでしょうかね。あまりに父親とは感じられなかった軽薄みたいな所から、前巻でセリスに抱いた違和感は、間違いではなかったみたいです。

 今回のラスボス的立場の人物との戦闘について。常に余裕の態度でアノスと対等に闘っていた(ように見えていた)ので、「こいつはもしかしてアノスに迫る力を持っている?」とか思わされた時も僅かにありました。

 でも、お話にならないくらい格も役者も存在感も違っていました。その事実を知る事によって、アノスの内にある強大な力を改めて思い知る事にもなりました。

 ただ、アノスであっても、決して何もかもが簡単に余裕で思い通りに行くわけではない。その問題が“力があり過ぎて抑止するのに意識せざるを得ない”と言うのは、何ともアノスらしいなと思いましたけどね。

 あと、今回印象的だったのは、エミリアや魔王学院生徒達の奮起。意識して活躍の場を与える描き方だったので、特に成長と躍進ぶりが際立っていました。アノスが彼ら彼女らの強さを信頼し、また彼ら彼女らもアノスの信頼に応えるために奮起する。この様子もとても見応えのある展開でした。

 ここまでで、アノスの記憶は大体取り戻して一件落着……ではないんですよね多分。まで見ていない、記憶の封印『創星エリアル』がもうひとつ残っている。しかもアノスにとっては“良くなさそうな”記憶らしく。次の展開でどう絡んでくるか、気になる所です。

既刊感想:4<上>4<下>