カッティング 〜Case of Tomoe〜

[著者:翅田大介/イラスト:も/ホビージャパン HJ文庫]★★★

カッティング ~Case of Tomoe~ (HJ文庫)

カッティング ~Case of Tomoe~ (HJ文庫)

 シリーズ第2巻。明るみに出たのは、秘密裏に行われ
ている不老不死研究が『idea』という組織(らしきもの)
の手によるものだと言う事。ただ研究の経過や結果を
“見る”事だけが目的であり、得られた結果を何らかの
欲望の為に悪用しようとする意思も何も存在せず、本当
に“見る”だけが欲望と言える。……これは非常に性質
が悪く厄介な代物。
 彼らにしてみれば、それを望む者に技術を提供し、経
過や結果を“見続ける”だけが目的で、それ以上でも以
下でも何もない。その一方で、研究の影響に悩み、苦し
み、惑い、痛み、叫びを上げる人達(犠牲者と言ってい
いのかも知れない)も存在している。なのに現状では潜
伏して見ているだけの相手をどうにも出来ない。だから
性質が悪く厄介。
 前巻の肉体への自傷行為に対し、今回は心への自傷行
為。自分に嘘を吐き自分を偽りながら、その実自分自身
の存在そのものが偽りである事に気付けずにいる。そん
な偽りだらけの中で、正しいものを求め、それで偽りを
上書きして塗り潰してゆこうとする。
 ケイイチロウとトモエ。二人ともぐらぐら揺れる精神
バランスで歩き続けて、ようやく掴んだこの結末には心
底ホッとさせられた。ただ、影響を受けたせいでついた
“傷跡”はどうしても残ってしまう。幸せな結末でも素
直に喜べなくて複雑な気分に陥ってしまうのはこの辺り
が原因。やっぱり根源が潰えない限りはどうにもならん
のだろうか……。

既刊感想:カッティング 〜Case of Mio〜