[著者:八目迷/イラスト:くっか/ガガガ文庫]★★★
第13回小学館ライトノベル大賞『ガガガ賞』&『審査員特別賞』受賞作
「そのトンネルを潜れば失ったものを取り戻せる、ただし自分の老化と引き換えに」。そんな噂を耳にした塔野カオル。喪った妹のカレンを取り戻そうと、ある日偶然見つけてしまったその『ウラシマトンネル』を、転校生の花城あんずと調査する事にしたのだが……。
人の死なんて案外呆気ないもの
として描かれていたカレンの死因。それは不運としか言い様が無く、悔やむ事も憐れむ気持ちも抱き辛くて。しかしカオルは“自分のせい”だと重く背負い続けている。だからこそ、代償を支払ってでも「取り戻したい」と強く願ってしまう。
『時間の経過が異なる』と見事に立証しながらも
それがどんなに危険で、多大な“時間と言う代償”を支払う行為だとしても、カオルがトンネルの先へ進む事は誰にも止められない。違う時間の流れの中で、ただ好きな人を待つしかない、あんずの想いが辛く苦しく圧し掛かる。
どうか幸せな結末を
トンネルに引き摺られてカレンと過ごして終えるのか? それとも現実へ生還出来るのか? あんずは待ち続けているのか? 終盤までは結末がどこにでも転がりそうだったので、本当に祈るような気持ちでカオルの動向を見守っていました。