SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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おいてけぼりの錬金術師

[著者:てぃる/イラスト:布施龍太/Mノベルス]

 日本から仲間同士(あるいはクラス単位?)で異世界召喚されて、勇者一行として魔王を倒し、再び日本へ帰還を果たす……はずが、たった一人だけ置いて行かれて異世界に取り残されてしまう。それが主人公のA級錬金術師・光道長=ライトロード。

 異世界人が急にぼっちになってしまった割には、案外悲観的にはなっていなくて。「なってしまったもんはしょうがねえから、異世界生活を堪能するか~」みたいな楽観的な態度でした。その理由について、ひとつは錬金術師として異世界を生き抜いて行く実力と自信が備わっているから。もうひとつは、『魔王との戦いで亡くした二人の仲間を蘇生させる』という目的がある為、最初から既に覚悟が決まっていたから。ライトにとって最優先事項は後者で、その材料を集めて蘇生方法に辿り着く事が、この物語のメインになって行くのかも知れません。

 今はまだ錬金術の工房を新たに立ち上げたばかりなので、話の方向性が定まるのはこれからなのだと思います。ライトもあんまり表立っては、「二人を絶対生き返らせる!」みたいに息巻いているわけでもないですし。それでも「絶対成し遂げてみせる」みたいな、内に秘めた静かな闘志は所々で際立って感じられてもいました。