［著者：まさきとしか／小学館］
十五年前、警察の職務質問から逃げた中学生の少年がトラックにはねられて死亡した。何故逃げたのか、逃げなければならなかったのか、一切の謎を残したまま。
一方、それから十五年経った現在、２０代女性会社員が自宅で殺害される。重要参考人として不倫相手の名が上がったが、その日を境に行方不明になってしまう。
この、時代も状況も全く異なる二つの事件。接点など何ひとつないように思われていた二つの点が、奇妙な形で少しずつ結び付いて線となって行く。そんな『見えない糸』を、か細い手がかりから見出したぐり寄せて真相へと迫って行く。
読みながらずっと『接点探し』をしてましたが、なかなかしっぽを掴ませてくれなくて、でもそう言った先への興味からの引き込み方が絶妙にうまいなあと思いました。
一言で表すなら『母の愛情と狂気』でしょうかね。ただ、決してそれだけでは言い表せない、複雑で重くて苦しくて辛くて、ちょっとだけはどこかで救われたような、そんな印象のお話でした。
ラストのシーンはどう捉えればいいのか……悩ましい所でしたが、“本音を受け取れた”と言う所で、読み手の気持ちが救われたようにも思えました。
