SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

虹の岬の喫茶店

[著者:森沢明夫/幻冬舎]

 心穏やかな優しき初老の女主人・悦子が営む喫茶店。そこは人目に付かずひっそりとたたずみ、普段は他人を拒むかのような分かりにくい立地にありながら、“その居場所を欲している人”を自然と店先まで誘ってくれる。

 そして悦子は様々な悩みを抱えて辿り着いた人達に、極上のコーヒーと、それぞれに合った『音楽』を振舞う。受け入れた訪問客達の悩みや迷いはいつしか晴れて、今度は悦子と喫茶店に色々な影響を残して去って行く。

 人と人との繋がりの連鎖で、次の人がまた別の次の人へと、リレーのバトンを渡すように少しずつ何らかの影響を与えながら時間が流れて行く。まるで全てを包み込むような悦子の性格のように、穏やかで優しい気持ちになれる物語です。

 悦子に救われた人たちの残した影響が、最後には悦子の心を救う事になる。このように収束するラストの描写も、とても素敵なものでした。