SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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最後の医者は雨上がりの空に君を願う(下)

[著者:二宮敦人/カバーイラスト:syo5/TOブックス]

 桐子の回想から、少年時代の桐子と福原(とは明言はしていないけど間違いなく=カズ君)の話の続きから。すれ違ってはいたけれど、どうやら本人同士が少年期に直接顔を合わせたわけではなかったようです。

 そして今回は、桐子と深い交流を持った福原の母・絵梨と、福原と父・欣一朗との家族と病気との闘いと葛藤の様子がメインエピソードとなります。これまでとは全く異なる、福原の病気に対する向き合い方や意気込みなど、新鮮に映りながらも脆く危うい雰囲気が印象的でした。

 表面上でしか見えない父親としての欣一朗は、やはり福原にとっては憎悪すべき対象になってしまうのも仕方ないと感じました。ただ、認知症状で次々に欣一朗の過去が明るみになるに連れて、彼がひた隠しにして来た心の奥の『本音』に、どうか福原が気付いて欲しいと願わずにはいられなかったです。

 そんな父と過去との直面で精神的に窮地に立たされた福原に“気付き”を与えてくれたのは、やはり桐子との対話でした。医療との向き合い方が正反対であっても、根っこの部分では互いを認めて分かり合い信頼し合っている。その事が凄く良く分かる、心に染み入る対話でした。

既刊感想:最後の医者は桜を見上げて君を想う
     最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上)