SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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恋のヒペリカムでは悲しみが続かない 下

[著者:二宮敦人/カバーイラスト:syo5/TOブックス]

 恋愛の相談を受けているようでいて、実はホスト側の彼らの方が相談者の恋愛観を通じで自身の価値観を見直す事になる。最も重点が置かれているのは、多分その辺りなのかなあと読んでいて感じました。

上巻での檜山も、続きでの谷崎と篠田も、共に正しいと思っていた自分の価値観に疑問を抱き、そこに向き合って異なる価値観を受け入れて成長するような、そう言った描写が印象的でした。

 今回の下巻では、実態が謎に包まれている春日部オーナーの事を知りたいと思う三人が、何か手がかりを得ようとして過去に彼と触れ合った印象深い思い出を語り合って行く。同時に、春日部自身の視点からの語りで、彼の過去の出来事を埋めて行くと、言う展開でした。

 素直に言えば「結局よく掴めない人だったなあ」と、最後までそんな気持ちでしたね。知りたかったヒペリカムの立ち上げ当時の事情についてはハッキリしなかったので、その辺りは少々残念でした。

 ただ、春日部誠と言う存在を深く知った事で、彼が心の内に抱く信念や、檜山達を放っておけず自分の内に受け入れた思いみたいな所は、何となく感じ取れたような気もしました。

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