[著者:根本聡一郎/双葉社]
とある大手広告会社の採用最終選抜試験は、『戦争をすべきか否か』の決定を宣伝合戦で競う『プロパガンダゲーム』だった。8人の最終候補者を『政府側(戦争推進)』と『レジスタンス(戦争阻止)』に分け、100人の選別ざれた一般傍聴者に訴えかける効果的な宣伝を考え仕掛け、最終投票で得票の多かったものが勝利する、と言った内容。
ただし『勝利=採用』と言うわけではない。「じゃあ一体何でこんな事をさせるの?」と、読みながら当然の疑問を抱くわけですが、ここが物語最大の仕掛けであり、結末に大きく関わって来る事でもあります。まあフィクションとは言え、どう見てもまともな企業採用試験とは言えないので、その辺の違和感は薄々感じ取れるのかなと思います。
『どちらが勝つのか?』を予想しながらの情報戦は実に見応えがありました。更に裏に隠された企業側の思惑と、採用試験を受けた側の推理洞察が絡み合い結末に至るまでの道程も、最後までどうなるか分からない目の離せない展開で非常に面白かったです。もしかしたら本書を通じて、この世にあふれる『情報の強い引力』に踊らされないように、と自分に言い聞かせる事が出来た……のかも知れません。