[著者:鯨井あめ/講談社]
タイムスリップして、過去に存在しないはずの少年の中に成人した自分の意識が入り込み、その謎の存在と『本当の少年時代の自分自身』が関りを持つ事になる。
大人になった自分が、嫌でも客観的に過去の自分と向き合わせられた場合、果たしてどんな感情を抱いてしまうだろうか? 読んでいる事ら側にも、そんな問いを突き付けられているような気持ちになりました。
もしも目を背けたくなるくらい大嫌いだったとしても、たとえ身の程知らずで愚かな過去の行動の積み重ねが今の大嫌いな自分を作り上げていたとしても、きっと忘れかけているどこかにヒーローだった自分自身が居たはず。
そんな風に思わせてくれる、もしかしたら救いになれた自身のヒーロー像を思い出す気付きを与えてくれるかも知れない。読後感も清々しく優しさに満ちた物語でした。