SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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可燃物

[著者:米澤穂信/文藝春秋]

 警察機関が事件の捜査を重ねて『これが真相に間違いない』と確定させようとする寸前で、常に冷静冷淡に違和感を嗅ぎつけ「待った」を突き付けて、誤った確定事項をことごとく覆して『完全なる真相』を暴き出す。それが本作の主人公で刑事の葛。

 収録の5編、どのエピソードも葛だけにしか見えていない『違和感』があり、その違和感を徹底的に追究し尽くした先で、誰も見えていなかった真相を掴み取る様が実に面白い。

 一方で、葛や他の警察関係者の人物像や感情的な部分に関しては常に淡泊に淡々と描かれているので、捉え方によっては何となく平坦で味気ない雰囲気に映るかも知れません。

 あえて意識して描かない事で妥協を許さない厳格で冷淡な葛の性格を表していたり、事件現場の捜査での息が詰まる緊張感が示されていたのかなあ、と個人的には感じました。