SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

大魔法師の息子 Lesson1 最強の愛弟子と復讐に囚われる少女

[著者:大菩薩/イラスト:ねめ猫(6)/オーバーラップ文庫]★★

第5回オーバーラップWEB小説大賞『奨励賞』受賞作
 大魔法師アリアの息子にして魔力ゼロの最強弟子、無道祢音。母に外の世界で見聞を広げ同世代の人達と交流を深めなさい、と送り出された世間知らずの息子は果たしてどのようにして期待に応えて行くのか。

冷静な態度に余裕の表情
 外の世界を知らない為、常識がズレてしまっている。それ故に、最初から敵を作り易く誤解を招きそうな空気を出しまくってましたが、理解ある仲間に巡り合えて良かったんじゃないかな? 孤立してこじれる不安もあったので、ちょっとホッとしました(それでも祢音は気にしないでしょうけど)。

復讐の少女に重ねる境遇
 冥の姿が過去の自分を思い出させる。何となく察せられてはいましたが、祢音のその部分はまだ詳しく語られておらず。紅音や朱音が絡んで、今後その辺りの話が広がって行きそうな感じです。

正体不明
 コードネーム『恐怖』に『慈愛』。この道化師達の存在、目的や行動の意図など、ほぼ全てが謎に包まれている。冥の敵討ちは達せられた筈ですが、何となくスッキリしない幕切れで、これが祢音の素性や過去と何らかの関りを持つ事になるのかどうか。

友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 2

[著者:世界一/イラスト:トマリ/オーバーラップ文庫]★★★

『ニセモノ』意識で接しているのは優児だけ
 多分、おそらくは。冬華の振る舞いに関しては、もう“周囲の目を欺くために恋人のフリで演技している”ようには全く見えなくなっているので。なんか、こうなってしまったそもそもの切っ掛けを忘れつつある。

疎遠だった思い出の中の幼馴染は強い
 誰の事とは言いませんが。本人は必死で隠し通そうとしていてもバレバレなわけですが。いや、でも好意は丸分かりながら奇妙な接し方をしているのは謎だったので、その理由を知ってようやく納得出来ました。

ゆう君とナツオ
 終盤の夏奈の独白、からの告白は、胸を締め付けられるような切なさで満ち溢れていて、無性に転げ回りたくなってしまいましたよ。贔屓で応援したいなあ、と思いながらも優児の返事に込められた気持ちも凄く良く分かるんんだよなあ。

ニセモノがホンモノに変わる日は?
 冬華がハッキリ偽りのない想いを伝えるのが先か、優児が冬華に本当の恋愛感情を抱くのが先か。後者は全くそうなる想像が浮かびませんが、変えられなければ現状を変えて進む事は出来ないでしょう。

既刊感想:

かまわれたがりの春霞さん 隣の席のあの子は俺の嘘が好き

[著者:鶏卵うどん/イラスト:八尋ぽち/MF文庫J]★★

第15回MF文庫Jライトノベル新人賞『優秀賞』受賞作
 嘘を吐いてポイントを稼ぎ、溜まったポイントで好きな女の子を彼女にしてもらう権を目指して奮闘する主人公・卯曽月誠斗(うそづきまこと)。嘘と誠に翻弄される事を運命付けられた氏名を持つ男。

他人に嘘を吐くと言う事
 これ正直な所、読む前の時点から既にあんまり気乗りしなかったんですよ。誠斗は「吐いても楽しくなれる嘘はある」って言ってましたが、それでも嘘を吐いた時点で雰囲気が微妙になったりこじれたりするのは目に見えているじゃないですか。

必要ポイントゼロのお隣さん
 しかし、確実にもやもやしてしまう空気を見事に中和してくれた、陽の存在は非常に大きかったですね。誠斗も勿論平気なわけではなく、その度に罪悪感を募らせてしまう辺りで、『嘘を吐く』要素に対する忌避感は無くなってました。

攻略不可能
 そして最後、誠斗に憑りついていた嘘の妖精は去り、たったひとつの“究極の呪い”だけが残る。自力で乗り越えるのは無理か? 脱却する為に、またポイントが必要な展開になったりするのでしょうか。

『このライトノベルがすごい!2020』の感想

ランキング、各種集計以外の所で
 個人的に印象に残った記事を取り上げて行きます。

人気作家に訊く! 私のおすすめライトノベル(P93~102)
 SNSが普及して、著者と読者との距離が身近に感じられるようになった昨今でも、正面からこれはなかなか訊けないですよね。非常に興味深くて面白い。人数的には充分でしたが、ここに載っていない「俺が好きなあの作家さんはどうだろう?」ってなっちゃいますね。 

読者を選ばず面白い 女性向けシリーズ(P152、153)
 女性向けの物語の特徴、男性向けな物語との相違点、男女の別を問わず楽しめる理由、などの紹介。幾つか作品も取り上げられてましたが、出来れば『女性向けレーベル』の一覧を掲載して欲しかった。それだけでも興味を抱いて検索、で探し易くなると思ったので。

2019年を総括(P182~185)
 確実な読書世代の広がりと共に、どの世代の読み手にどんな作品で応えて行くか。様々なターゲットへ向けて、多種多様な作品が生まれている。その中には「自分には合わない」と思うような作品も出て来るかも知れない。この辺りの部分が特に印象に残りました。

2020年を展望(P185)
 2010年代の変革、Web小説から書籍化の流れの普及、SNSで身近になった著者と読者の交流、ストリーミング配信が主流となりつつあるメディアミックス展開、電子書籍の普及。これらの波が2020年も留まることなく活発に押し寄せて来るのかどうか。

特殊能力統轄学院 叛逆の優等生と悪魔を冠する少女の共犯契約

[著者:ひなちほこ/イラスト:シエラ/MF文庫J]★★

第15回MF文庫Jライトノベル新人賞『佳作』受賞作
 自身の妄想を具現化する能力が発現してしまった少女達と、彼女らを表向き保護しながら裏で管理、隔離、能力研究などの役割を担う組織に属する主人公との交流の物語。

超常現象『脅威』
 管理する側の機関も全貌は掴めていないそうなので、発現条件や、何故十代の少女にしか宿らないのか、その辺りは物語の中でも解明はされてないみたいですね。それが分かっていないから、どうしても後手に回ってしまうのでしょう。それでも鎮圧出来る所は、優秀な人材が揃っていると言えるのでしょうけど。

契約と強制と束縛
 しかし、アスモデウスと時雨の契約内容を知った時、随分えげつない縛りで酷使してるなと、嫌悪感を抱かされましたよ。そこで、きっと紫門が壊れかけたアスモデウスの救いになってくれるだろう、と。

真相
 ……そう思っていた時期もありましたが。紫門の“目の前でさらわれた少女”、アスモデウスの“王子様”、六年前の事件に『宇都宮事変』、未解決なままの仮採用監理官連続襲撃、そしてラストに登場した少女。提示されたこれらの事が、想像以上に難儀で複雑に絡んでいそうです。