SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

黒聖女様に溺愛されるようになった俺も彼女を溺愛している1

[著者:ときたま/イラスト:秋乃える/HJ文庫]

 なんか不思議な雰囲気を感じさせる関係性だなあ、と深月と亜弥の『お隣さん生活』を眺めながら思ったりしました。激甘ではないし、逆にギスギスでもないし、心の距離感が遠くはないんだけど接近しているとも言えず……うーん、何て表現したらいいんでしょうかね。

 『そこに居る事が当たり前』と言うか、意識して言葉を重ねなくても『自然でいられる関係』と言うか。なんにせよ間違いないのは、二人の関係に触れていて“とても心地が良かった”と言う事。互いに好意があっても、まだ恋愛感情を明確に意識していない所で、難しい葛藤や悩みを抱かせないからそう感じられたのかも知れません。

 まあどっちも超絶に不器用なのでねえ、真っ直ぐに進展する気は正直あまりしてませんが、本気で意識し始めたら心地良く思っていた関係性はどうなるか。本音は関係が進展して欲しいと思っているんですけど、何となく足かせとなりそうな亜弥の『家庭事情』も気になるんですよね。

推しに熱愛疑惑出たから会社休んだ

[著者:カネコ撫子/イラスト:天城しの/角川スニーカー文庫]

 「じゃあ結局どんな関係になりたいんだろう?」みたいな答えの定まらない関係性に、もやもやとしたじれったさを常に感じさせてくれる。そんな立場的に非常に面倒で複雑な距離感に対して、新木と桃花の葛藤やら身悶えやらがじわりじわりと伝わって来ました。

 読んでいてもうずーっと、「煮え切らねえなあ」って思いを常に抱かされたりもしました。ただ、『アイドル』と『彼女の推し』と言う関係性がそうさせているのは充分に理解しているつもりで、複雑に絡み合う二人の関係もどかしさも面白味の内なのかなと思いながら眺めていました。

 『好き合っている』のは間違いない。互いに自覚もしている。でも、二人の本音を縛る『立場』が素直に思い通りにはさせてくれない。『アイドル』と『推し』のままの関係を通すか、それとも『恋人関係』を認めて変化してゆくのか、果たしてどうなって行くでしょうね。

地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。

[著者:水戸前カルヤ/イラスト:ひげ猫/角川スニーカー文庫]

 全力で『ご都合展開』を堪能する物語、と個人的には思いました。決して批判や否定的な意味ではなくて。むしろ意図的にこう言った展開を積み上げて、「度重なるご都合展開を喰らえ!」的な潔い見せ方だと感じたりもしたのですがどうでしょうね。

 まあ確かに「んな都合よくはならねーよ!」と言いたくなる状況が数知れずなのは正直な所でしたが、偶然に偶然を重ねて「これってもしかして必然?」みたいな気持ちを抱かせて行くようなやり方、結構好きです。

 ちょっと気になってる事としては、涼が小中学生時に『苛めを助けられなかった人物』は誰なのか? について。同じ過去からの出来事で友里かと思ってたんですが、どうも違うみたいですよね。

 偶然に偶然を重ねるなら、古井さんっぽい気もするんですが……本人からは今の所一切“匂わせ”は感じられないので、ただの見当違いかも知れません。でも、涼にとっては忘れられない心の傷跡なので、いずれ物語の中で取り上げられるものと思いたいです。

ハリボテ魔導士と強くて可愛すぎる弟子

[著者:鬼影スパナ/イラスト:としぞう/MF文庫J]

 「いやいや、魔力が最弱(最大MP5)とか言いながら、どうせチート能力で無双とかするんでしょ?」って思ってたら、本当にクソザコ魔力のままでしたごめんなさい。

 しかし、主人公のタクトが最弱魔力を自覚しているからこその、最大限の『創意工夫』で難局を乗り切っている所は、とても見応えがありました。

 あと、タクト自身は地位も名誉も興味なくてさっさと隠居したいのに、その願望に対してどんどん知名度と功績が“周囲の勘違い”で上昇して行く様子も、眺めていて面白かったですよね。

 魔力最弱の裏を返すと、それ以外のタクト魔術素質や魔術知識は超絶優秀なので、魔力枯渇の対策があれば今後無双する可能性があるのかも? 魔導研究者としても超有能ですし。ただ、個人的には魔力最弱のまま“足掻いて逃げ切る”方が見たいかなあ、なんて思ったりしてます。

EVE ―世界の終わりの青い花―

[著者:佐原一可/イラスト:刀彼方/HJ文庫]

 生活基盤の全てが、長期的な安定保障を約束された世界と言うのは、現実世界において理想の到達点なのかも知れないなあ、と頭の中でぼんやり考えたりしてました。

 人口増減、健康、就職、お金、食糧……などなど、様々な問題が技術革新によって解消されて、長期安定で安心安全の世の中って、夢物語だとしても憧れは抱いてしまいそうです。

 しかし一方で、絶対的な安定を得た=頂点に達してしまった=新たな発展性が見込めない、と考える事も出来るわけで、そう言った『新しいものへの欲求の欠落』が安定の衰退を呼び起こす可能性もゼロではない。

 そのような、何となくの危機感を抱いている人達の葛藤の物語でもあったのかなあ、と個人的には思ったりもしました。