[著者:あまさきみりと/イラスト:古弥月/角川スニーカー文庫]
途中で詳しい事情を知るまで、どうしても桃子に対して嫌悪感が付きまとってしまいました。一郎に『恋愛ごっこ』を持ちかけて、さも「貴方に好意を抱いてます」と近付く意図が読めなくて、何となく背徳的な空気を感じてしまったせいかも知れません。
一郎も一郎で、恋愛に疎いとか言ってるけど、単に女の子の押しに弱いヘタレ気質なだけなんじゃないの? とか思ったりしましたけどね。彼女に誠実でありたい、とか思いながらあっさり桃子に丸め込まれてるんだもん。ちょっとね、ハッキリしない態度と物言いにイラっとさせられたりもしました。
トップアイドルの彼方は、なかなか逢う機会が与えられないのに、一途に恋人の一郎を想っているのが凄く伝わって来る。彼女の出番って作中でも本当に控え目なんですよ。それにもかかわらず、です。
だから、余計に煮え切らない一郎の態度と、寝取りだとか略奪愛を露骨に匂わせる癖に狙いが掴めない桃子に、言いようのないもやもやした気分と、どうしようもないムカつきを覚えたんだと思います。
ただ、後半で桃子が抱える事情を知ってからは、随分見方も変わりました。〝変わらざるを得なかった”、と言うべきでしょうかね。桃子は同情を欲したくなくて、でも一郎なら救いを与えてくれると確信していた。だこらこその、一郎に対する劣情を刺激するこんな挑発的な態度だったんですよね。
しかし、これから先どうなるんだろう? 桃子が『本気』に目覚めてしまっても、一郎が応えられないのは明白だし。彼方との関係も壊れて欲しくないんだよなあ。あんまり泥沼展開にはなって欲しくないのが本音です。
彼女にナイショの恋人ごっこ。(1)
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あまさきみりと/古弥月 KADOKAWA 2021年07月30日