SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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僕は今すぐ前世の記憶を捨てたい。~憧れの田舎は人外魔境でした~

[著者:星畑旭/イラスト:スズキイオリ/TOブックス]

 ふと田舎の空気を感じたくなる。その環境で優しいじいちゃんばあちゃんと一緒にメシを食いたくなる。病弱な3歳児の男の子(読み手の立場によって息子だったり年の離れた弟だったり姪っ子だったりあるいは孫だったり)を、もの凄く過保護に甘やかして可愛がりまくりたくなる。そんな物語。

 舞台は現代日本のようでいてちょっと異なる世界。魔法があって魔物がいて、田舎に行く程魔力の素の『魔素』も魔物も増えて行く。主人公の3歳児の空くん、『魔素欠乏症』なる病気で、魔素が少ない都会では暮らし辛い体質の為、母の実家で祖父母の住む田舎へひとり移住する事に。

 その田舎と言うやつが、規格外の人外魔境で面白い。虫は巨大、植物は動く、家には神様が住まう、そして住民たちは大人も子供も環境適応するようにめちゃくちゃ強い。

 前世の記憶の一部が急に生えた空には、日本と同じようで異なる世界が異世界のように見えてしまう。前世の常識が邪魔をしてこの現実を受け入れ難いから、『今すぐ前世の記憶を捨てたい』と言うわけです。

 もっとも、じいちゃんもばあちゃんも住民達も、みんなとても親身で優しいので、空も徐々に異質な環境を楽しめるようになって行きます。そんな様子を眺めつつ、ほっこりした雰囲気に浸らせてもらえました。