SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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転生令嬢と数奇な人生を1 辺境の花嫁

[著者:かみはら/イラスト:しろ46/早川書房]

 母親の記憶から、娘である主人公・カレンの事のみが突然『全て消え去ってしまった』事が始まりで、そこからタイトル通りの『数奇な人生』を歩まされて行く物語。

 異世界転生令嬢もので、カレン自身に奇妙なチート的な特殊能力が“一切備わっていない”のが最大の特徴。実は身体的にも立場的にも、幾度も危機的状況に陥っているんですが、思い返せば「よく反則なしで難局を乗り切り続けられていたなあ」と言う気持ちが強かった気がします。

 一応貴族の地位はあっても、周囲の地位がさらにはるか格上だったり、戦う強さ的な能力は当然何も持ち合わせていない。でも、カレンの行動を眺めていて「彼女なら成し遂げてくれるに違いない」と妙な期待感を抱いてしまうのは、底知れぬ『人間的な強さ』によるものなのかも知れません。

 とりわけ、何事に対してもまず『受け入れ』『認め』『考え』『言葉を武器に用いて』『行動に移す』、これら一連の流れを経ての『決断力』が圧倒的だったと思います。

 数奇な運命をまず受け入れ、そしてカレンが「こうしたい」と思った事を必ず力強く彼女自身の元へ引き寄せている。今回ラストの急転直下の状況で、果たしてカレンはどんな運命を手繰り寄せてくれるのか。