SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5

[著者:しめさば/イラスト:ぶーた/角川スニーカー文庫]★

 とにかく、「吉田と沙優が納得の行く形で、望んだ通りの結末に至って欲しい」と願うばかりでした。たとえ二人が(特に沙優にとって)どんな過酷な経緯を辿ったとしても、受け入れる覚悟で読み進めてました。「最後に幸せであってくれるなら」と。

 何せ沙優や彼女の兄・一颯の話を聞く限り、どう考えても母親にまともに話が通じるとは思えなくて。更に家族以外の吉田が介入する事で、どんな事態が起こってしまうのか。少なくとも穏やかに済みそうにない事は分かり切っていたので、踏み込むのに躊躇いましたよね。緊張感が半端なかったです。

 母親との再会シーンで特に強く感じたのは、『吉田と沙優と一颯の3人が揃っていなければ、乗り越えられなかった』と言う事。それぞれが母親に対して異なる接し方が出来た事で、前に進めたんじゃないかなと。特に一颯の行動や感情の描き方はとても良いなと思えました。本当に良いお兄さんだよね。

 最後に。結末に関しては、個人的には非常に満足でした。それは、最初に書いた『沙優と吉田にとって納得の行く望んだ結末』だったから。この結末の先の二人を想像しつつ、余韻に浸ろうと思います。

既刊感想:Each Stories