SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

夢にみるのは、きみの夢

[著者:三田麻央/イラスト:あおのなち/ガガガ文庫]★

 人型AIロボットのナオの事を、最初の頃から「もしかして人間なんじゃね?」とか疑ったりしてました。物語の雰囲気的に人工知能の研究が発展している様子が感じられなかったとか、逃亡した割に追っ手の影も形も無かったりとか、美琴との関係が“順調に行き過ぎている”とか。道中で、色々伏線や含みのある『匂わせ』が感じられていたなあと。

 特に気になっていたのは、美琴が見る『夢』の残片と、ナオが彼女に対して時折読み切れない表情を見せていた点。『何か』があるのは確実で、手が届きそうで届かないもどかしさもあり、美琴視点で拭い切れない妙な不安が常に付きまとっていました。

 そして終盤で、「なるほどそう言う事か……」と唸らされました。そこまでで真実を気付かせないようなバランス加減や、明かしてからラストまで一気に引き込む描き方は本当に素晴らしかったですね。

 終わってから深いため息が漏れてしまったのですが……なんかこう、未来への希望と可能性が少しでも示され事で、救われた気持ちになれましたね。