SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ミモザの告白

[著者:八目迷/イラスト:くっか/ガガガ文庫]★

 幼馴染みの男子。幼少期から気心の知れた、相棒のような自分と『同性』のあいつが、実は『身体は男性』で『心は女性』だった。自ら周囲に秘密を暴露した幼馴染みと、一体どう接して行けばいいのか? 必死でもがいて答えを探しながらも、徐々に自らの思考に迷い、混乱の沼に身を沈めて行く……。

 色々触れたい事は浮かんでも、どこにどう触れたら良いのか、なかなか述べたい事がまとまらないですね。非常に重くて、深くて、繊細な問題。咲真の度重なる感情の取り乱し振りに触れて、こっちも同調して全部投げ捨てて逃げ出したくなる程でした。

 西園や世良の動向に対して、咲馬の視点だと嫌悪感や異質さを含んだ、“受け入れ難い何か”にどうしても感じてしまう。でも、話が進んで行くに連れて、嫌悪や異質も納得出来るものへと変化して行くんですよね。あれだけ咲馬に同調して、感情的に高ぶっていたはずなのに、ちょっとした驚きでした。

 咲馬がどれだけ理解しようとしても、やっぱり西園の発言はいちいちムカつくし、世良の思考は理解不能で受け入れ難くて嫌いだ、となる。でも、相手にとって他人の自分が『それは違う』と断定して否定するのは間違っている、それをやってはならないのかも知れない……と変化して行くんですよね。

 じゃあ咲馬にとっての汐はどうか? この問題に深く関わる人ほど、よりハッキリと心を取り乱している。泥沼にはまって行きそうで怖いんですが、どんな結末であっても最後まで見届けたいですね。