SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

夜空の呪いに色はない

[著者:河野裕/イラスト:越島はぐ/新潮文庫nex]

 階段島シリーズ第5巻。思い返せば、もう大分以前から七草と由宇は小学生の大地の問題を引っ張り続けていて、「そんなに大地の家庭環境と“捨てたもの”に関わることが大事なのか?」と、少しうんざりしている所も正直ありました。

 「なんで七草はそれ程までの大地の問題に執着する?」みたいな、入れ込み過ぎな様子がずっと気になっていたんです。今回は、そんな大地について抱えていた『もやもや』がスッキリ晴れた気分。彼の問題については、魔女と階段島をどうにかする上でめちゃくちゃ大事なものでした。やっと気付いてうんざり思ってごめんなさい、って感じで。

 あとは、個人的には何かと七草への絡みがねちっこくてうっとうしく思っていた安達にについて、ようやく謎だった彼女の『全貌』が見えて、この辺も少しは気持ちが穏やかになれたかも知れません。

 今回起こった事を経て、個人個人の感情は見事にバラバラながら、『進みたい方向』は一点に定まって来たのかなあと言った感じです。大地の問題、捨てたものを拾うかどうか、階段島はどうなるのか、魔女の権利は誰に向かうのか、終着点がうっすらと見え始めて来ました。

既刊感想:いなくなれ、群青
     その白さえ嘘だとしても
     汚れた赤を恋と呼ぶんだ
     凶器は壊れた黒の叫び