SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

灯台からの響き

[著者:宮本輝/集英社]

 妻に先立たれた六十二歳、中華そば店主・牧野康平の失意と諦めと無気力から物語は始まる。

 しかし読み終わった後に再び振り返ってみると、そんな人生を半ば投げてた男はどこにも存在していませんでした。康平の生きる気力だったり意欲だったりは、最初と最後で『激変』していたなあ、ってのが個人的な気持ちで。

 ただ、物語の雰囲気としてはどこか和やかと言うか、とても緩やかに康平の気持ちが変化していってた風にも思えたり。そんな劇的な心の変化を急激なものに感じさせない雰囲気は、独特の持ち味のように感じられてとても印象に残るものでした。