SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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フルメタル・パニック! ―サイドアームズ2― 極北からの声

[著者:賀東招二/イラスト:四季童子/富士見ファンタジア文庫]

 カリーニンとマデューカスが主役と言う、熟年のベテラン職人から醸し出される『渋味』の匂い際立つような重厚かつシリアスな内容でした。この二人も長編ではあまり個人事情が語られる事もなかったので、過去を追憶するような重みのある雰囲気の描写は実に良い感じでしたよねえ。

 カリーニンは宗介との出会いのエピソード。ここまで深い縁と切り離せない絆がありながら、本編を思い返すとどうしても「何故?」と色んな思いが滲んでしまいました。ただ、世界是正の話が明確になった今、何となく理解出来たのは、カリーニン自身が全く手を出せずに喪った妻と子供が存在する過去を欲していたのかなあ、と。だから散々葛藤した末に、宗介やミスリルと決別する道を選んでしまったのかも知れません。

 マデューカスはトゥアハー・デ・ダナンの副長としてテッサの元に就くまでのエピソード。こちらはまず、これまであまりよく知らなかった彼の人となりを存分に知る事が出来て満足。あとは、長編で馴染みのある人達が過去に意外な所で意外な役割を担い、マデューカスと意外な出会いを果たしていた辺り、なかなかに興味深い所だったかなと。

 最後の一本は短編集ノリ的な感じだったのかな? 白トラの話は本当に本編で見逃しそうなくらいちょっとだけしか出て来なかったんですが、一応「どう言う事?」みたいな疑問で覚えていたので、まあなるほどここから繋がっていたのね、と言う感じでした。