SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

三角の距離は限りないゼロ5

[著者:岬鷺宮/イラスト:Hiten/電撃文庫]★★★

矢野メインの回
 矢野、秋玻と春珂との距離の取り方と定まらない自分の進路に大いに頭を悩ませる、の巻。相当迷いを見せていたので、「いかん、このままでは矢野が病んでしまう!」程度の危機感ありましたね今回。

迷いに迷って悩みに悩み抜いて掴んだモノは
 秋玻と春珂が互いに納得の上で『平等に愛して』と告げ、それで春珂の人格消滅を防げるならと矢野も「それなら」と提案を受け入れる。こんな状況になったら、もう「堂々と二股付き合いすればいいんじゃね?」としか言えないですよ。ただ、秋玻と春珂の状態が『正常ではない』『歪んでいる』と浮き彫りになるに連れて、このまま停滞していては矢野の負担が増すばかりになる。今回はその様子も含め、『前に進む為』の踏み込んだ展開でしたよね。

既刊感想:

86―エイティシックス―Ep.8 ―ガンスモーク・オン・ザ・ウォーター―

[著者:安里アサト/イラスト:しらび/電撃文庫]★★

終局が見え始めた先にある希望と戸惑いと
 レギオンとの戦争を終結させる手段を掴んだものの、たとえ最終手段であったとしてもシンたちは絶対に行使したくない心構えで、自力でレギオン殲滅による勝利を目指す模様。一方で、対レギオン戦が『永久に続く』から「『いつかは終わる』に変化し、未来に光明が差した事により、エイティシックスの面々も個々に複雑な想いを馳せるようになる。

あらすじを見て戦々恐々としながら
 今回は海上戦。海上海中仕様のレギオンが居ないとは言え、こちらも陸戦仕様で足場が無い海上では小回りが利かない。攻略難度も跳ね上がり、予期せぬ事態の連続でなかなかに難儀でした。そんな死闘の終局で訪れたこのラストシーン、無事を喜ぶべきか、起こった事態を悲観すべきか……どんな波紋が広がるか、次巻を覗くのがちょっと恐いですね。

既刊感想:

魔力を統べる、破壊の王と全能少女 ~魔術を扱えないハズレ特性の俺は無刀流で無双する~

[著者:手水鉢直樹/イラスト:あるみっく/電撃文庫]★

王道な展開、難儀な設定
 空から降ってきた訳あり少女を保護した主人公が、特別な能力を持っているが故に狙われている状況の彼女を護り抜こうと奮闘するボーイ・ミーツ・ガールモノ。王道で分かり易い内容かと思いきや、設定面が練り込み過ぎで、ごちゃつきや取っ付き難さを感じてしまってイマイチ乗り切れませんでした。

色々削ぎ落した『分かり易い』が欲しかった
 『お金』を『魔法』に変換する機械を漏れなく破壊してしまうから、武術に頼るしかない。その武術を用いて救いを求める少女を苦しみの呪縛から解き放つ。この実に分かり易い展開に、余分な『肉付け』をし過ぎているのが微妙な原因か。十五年祭も盛り上がったかと言えば「うーん」な印象で、他の脇役達も取って付けたような感じだったかなあ……。

アンフィニシュトの書 悲劇の物語に幸せの結末を

[著者:浅白深也/イラスト:日下コウ/電撃文庫]★★

選択のやり直しを繰り返して物語の完結を目指す
 主人公・輝馬が本の中の『主人公』となって、未完結の物語を完結まで導いて行く。実際に輝馬が『本の中に入って』『主人公を演じる』。多数の蔵書を持つ依頼主・霧ヶ峰絵色の収集能力で特殊な本を得たのかどうか、その本に宿る『人の意識を吸い込む』原理は何か? の辺りは詳しく語られていない。

『ハッピーエンド』とは何か?
 輝馬にとっての依頼達成地点は、実は『物語を完結させる』ではなく、その先にある『物語のヒロイン・アリアをハッピーエンドへ導く事』。依頼を請け負う前の輝馬の発言が、後に大きな意味を持つ事になる。『ハッピーエンドの解釈は物語に触れた人によって異なる』、と。物語の結末の解釈について、深く考えさせられるお話でしたね。

僕をこっぴどく嫌うS級美少女はゲーム世界で僕の信者

[著者:相原あきら/イラスト:小林ちさと/電撃文庫]★★

己の常識を無遠慮に振りかざす系男子
 堅物男子が己の内申点向上を目論んで、登校拒否の引きこもり女子の説得に奮闘するお話。最初は本当に相手の事なんぞひとかけらも考えておらず、打算100%の思考で解決に乗り出す主人公・真澄。そんなガチガチに凝り固まった彼の考え方が、引きこもりのクラスメイト・美加とオンラインゲーム内で遭遇して徐々に変化を見せて行く。

打算のみで生きる男子の変化
 真澄は勉学が全てであり、娯楽を徹底排除すべきものと考えている偏り過ぎな男。こう言う奴程、未知の世界にどハマりすると一気に転げ落ちてくれる。真澄の場合は極端な落ち方ではなく、彼にとって良い方への変化。打算でしか動かない堅物男が、美加との交流で少しずつ違う考え方を見せて行く辺りが見所です。