SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

錆喰いビスコ7 瞬火剣・猫の爪

[著者:瘤久保慎司/イラスト:赤岸K/電撃文庫]

 かつて地上の人間界と繋がっていたらしい、地底の『猫族』世界のお話。前回ビスコが黒革への止めに放った超信弓の矢が、長らく閉ざされていた世界間を再び繋げてしまった所からが、今回の始まり。

 猫族の問題に、ビスコとミロとチロルが巻き込まれる。人間界に害を為そうとする存在があって、じゃあ仕方ないからそれを止めるか、みたいな。

 ビスコの事情に直接絡んだ展開ではないので、番外編みたいな手応えだったでしょうかね。今回の話を通じて一番見せかたっかのは、ラストのビスコとパウーの様子。それは間違いないと思います。

既刊感想:

インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合

[著者:駿馬京/イラスト:竹花ノート/電撃文庫]

 第27回電撃小説大賞『銀賞』受賞作。

 SNSとの向き合い方、ネット炎上によるいわれのない誹謗中傷、精神的に追い詰められた果ての自殺……。フィクションだと分かっていても、無視出来ない昨今の現実社会問題が大きく関係した内容だったので、結構心に刺さるものがありましたね。

 裏で糸引いてた存在。誹謗中傷被害者達を救おうとする志はあっても、やってる事は加害者と同じ事。復讐と報復を仕向ける事は、新たな被害を生むだけ。結局どう足掻いても解決に至るのは難しい。今度はひまりの過去と深い関係者が絡んで来そうで、玲華との因縁深い相手とやり合う事にもなりそう。

忘却の楽園I アルセノン覚醒

[著者:土屋瀧/イラスト:きのこ姫/電撃文庫]

 第27回電撃小説大賞『銀賞』受賞作。

 殺戮兵器となり得る汚染物質を体内に宿した『アルセノン』と呼ばれる少女・フローライト。彼女を利用しようと目論む王国に対して、彼女を管理する役割に任命された主人公アルム。過去からの必然的な縁が互いを引き寄せ合う、二人の交流の物語。

 アルムに特別な何かがあるとすれば、フローライトと近距離で交流出来る事。特に心の距離は、アルム以外の誰も真似出来ない近さで親密な関係を結べている。その関係性を継続させて行く事で、いつか汚染物質を宿したフローライトを変えて行けるのかどうか。救ってあげる事が出来るのかどうか。

ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います

[著者:香坂マト/イラスト:がおう/電撃文庫]

 第27回電撃小説大賞『金賞』受賞作。

 客観的に見て、アリナはどう考えてもギルド受付嬢より冒険者の方が合っている。逆にジェイドは冒険者にしておくのが勿体無いくらい、ギルド職員雑務業に適性がある。足りないものを補い合える、めっちゃいい関係じゃないか、とか思ってしまった。

 アリナのスキル、終わってみて改めて謎多いですよね。『神域』の更に上位って事なのかなあ。魔神に関しても過去遺産についても、分からない事は多い。分かっているのは、ジェイドに付きまとわれるのと残業からは、逃れられそうにないと言う事。

ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒

[著者:菊石まれほ/イラスト:野崎つばた/電撃文庫]

 第27回電撃小説大賞『大賞』受賞作。

 『ユア・フォルマ』=レーザー手術で脳に埋め込む情報端末で、脳に連動して直感的に様々な機能を扱う事が出来るモノ。この物語の時代では、安全性が確立され、広く一般的に安価で普及している。

 『電索官』とは。他者のユア・フォルマに直接介入する事で個人情報を得て、様々な犯罪の捜査に貢献する。一部の能力者に許可された特殊な存在。

 人間の電索官エチカと、アミクス(人型ロボットの総称)の補佐官ハロルドとの関係や絆の構築を、事件の中で描いて行く物語。互いの過去の背景を追いながら、コンビとしての掛け合い、電索行為と事件とが複雑に絡み合った奥深さ、などが丁寧に描かれていて見応えも充分で実に面白かったです。