SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

デモンズ・クレスト1 現実∽浸食

[著者:川原礫/イラスト:堀口悠紀子/電撃文庫]

 冒頭のクラス名簿を見た時、真っ先に「え、これ全員(41人)把握しなきゃいかんの?」と思って挫折しかけて、結局覚えるの諦めて挫折しました。要するに物語での『描き分け』を気にしていて、「どれが誰やら分からん」となると困るなあとか頭に浮かんだわけですね。

 もっとも、クラスの中で『特に際立たせる存在』と『そうでもない存在』とで役割分担が大体決まっていて、その辺りの描き分けはさすがの巧さと感じました。少なくとも読んでいる内は、登場人物を把握するのに混乱はなかったのでホッとしました。

 あと、意外と登場人物達の年齢設定が低い(小学6年生)事も気になってましたが、あとがきで触れられていたのを見てなるほど、と。小学生以上に感じた精神力と行動力に対してはちょっと思う所もありましたが、極限状態での覚醒と考えれば受け入れられるかな。

 肝心の物語の内容については、ざっくり言うと『フルダイブ型MMORPGの世界が現実世界に浸食した』ような状況。今の所は分からん事だらけですが、先を知りたい興味と欲求の牽引力は非常に強いです。

好きな子に告ったら、双子の妹がオマケでついてきた1

[著者:鏡遊/イラスト:カット/ブレイブ文庫]

 エロ描写重視のラブコメ展開で、主人公と双子ヒロインがいちゃいちゃあれやこれやしたりされたり……な要素がメインかと途中までは思ってました。

 が、雪月と風華の『特殊性』に加えて、主人公の真樹の方にも意外な問題を抱えているのが明かされた時、「なんか単純明快なエロコメの中に妙な奥深さがあるぞ」と唸らされてしまいました。

 真樹の中の本質と、双子姉妹の本質を知った後で、これは出会うべくして出会った『運命』だと言い切ってしまっても言い過ぎじゃないなと思いました。ただ、裏を返すと互いに『他の誰かじゃダメ』、になってしまうんですよね。代用が利かない。

 この運命的な結び付きは、身も心も結ばれた相思相愛な状態を喜ぶべきなのか、それとも将来的にこのままの関係が一生続くのかと言う問題を気にするべきなのか。どうも雪月と風華の家柄の問題で、このままだと真樹との付き合いは“高校限定”で終わりそうなので、その辺りとどう向き合って行くのかも気になります。

恋人以上のことを、彼女じゃない君と。

[著者:持崎湯葉/イラスト:どうしま/ガガガ文庫]

 元カレ元カノ同士が意気投合して付き合いをするものの、『恋人関係』にはなろうとしない。物語の冬と糸の交流関係は、当人同士以外から見たら「これが恋人同士じゃなければ何なんだ」と誰もが突っ込みたくなりそうなものです。

 でも、誰に何と言われようとも「違います」と否定するもんだから、「もうじゃあそれでいいよ」って感じになります。二人の気持ちは、おそらく『恋人同士』と言う“枠”にはめられたくない、縛られたくない、なのでしょうかね。

 ただ、それを認めないが故に、『もっと互いの懐に入りたいのに入れない』みたいなジレンマも生じているようで、なかなか難しくて面倒臭い。本当は足かせを外して気ままに付き合えるはずだったのに、知れば知るほどに曖昧に濁してる関係が逆に足かせとなっている。

 いずれはハッキリしなければならない事なのかも知れませんが、縛られていない二人の方が見ていて心地良いので、もうしばらくは曖昧なままでいて欲しい気もしてます。

呪われて、純愛。2

[著者:二丸修一/イラスト:ハナモト/電撃文庫]

 3人共もれなく地獄行き。どんな結末になっても、最後まで見届ける覚悟で読み進めていました。いや、これが決して大げさな表現ではなくて。正直、白雪辺りが“闇落ち”して『刃傷沙汰』にでもなるんじゃないか、と危惧するくらい途中ヤバい雰囲気だったわけですよ。

 でも、思ってたよりも表立ってバチバチに本音をぶつけ合っていた所がちょっと予想外だったなあと。察しつつも本音を伏せながら悶々とする、みたいな胃に激痛が走りそうな展開を想像してたので、意外と精神的ストレスをため込まずに見ていられたかも知れません。

 とは言え、ど修羅場全開にドロッドロな三角関係には違いなかったですけどね。最後まで辿ってみて、「よくこの結末に落ち着けたなあ」って気持ちでした。とにかく『落としどころ』が凄まじく難しい問題だったので。

 廻の記憶喪失の件と、白雪、魔子との関係はとりあえずの決着は見たので、これで締めでもいいかなあ、と言う感じ。もっとも、売り上げ次第では続刊構想もあるそうなので、怖いもの見たさで3人の未来を覗いてみたいかも?

既刊感想:

竜の姫ブリュンヒルド

[著者:東崎惟子/イラスト:あおあそ/電撃文庫]

 シリーズ第2巻。前の話は忘れていても過去編だから割と大丈夫でした。自分でネタバレ回避的な感想を書いてたので、前巻のそれを見返しても「内容をよく思い出せんなあ」と頭抱えつつ、でも関連性は充分あるに決まってるのでちょっと損をしてたかも……と考えつつ「まあいいか」的な感じで触れてました。

 それはさておき本編について。絶望を見た後に、救いを手に入れる直前で、また絶望を味わいながら、再び希望を手にしかけて、また絶望を味わう……みたいな。一度足を踏み入れた底なし沼から、奇跡的にはい上がってもはい上がってもまた沈んで行くような、そう言ったどうにもならない悲劇を突き付けられたような感じでした。

 ブリュンヒルドが最期に救われたのかどうかを考えると、その答えを出すのは非常に難しい所で。ただ、己がやるべき事を経て、後悔を残さなかった(ように見えていた)と言う意味では、救われたのかな……と思いたくなりました。

既刊感想:竜殺しのブリュンヒルド