SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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死なないセレンの昼と夜 ―世界の終わり、旅する吸血鬼―

[著者:早見慎司/イラスト:尾崎ドミノ/電撃文庫]★

 突如雨が降らなくなった事で環境崩壊した世界にて。昼と夜の“二つの顔”を持つ吸血鬼が、行く先々でコーヒーを売りながら転々とあてのない旅を続けるお話。

 退廃した世界観が凄く好きです。荒野をのんびり放浪する雰囲気、なにもにのも縛られないセレンの奔放さや、昼と夜で違う顔を見せる二面性な姿も好きですねえ。と言う感じで、個人的に好きな要素が結構詰まってるなあって印象でしたね。

 主人公のセレンは、まあハッキリと『お人好し』ですかね。気に入った相手を見過ごせない、と言った方が合ってるかな。吸血鬼の特異性を持ちながら、どこか人間よりも人間っぽいと言うか。歳月を重ねた凄味を出しながらも、時折人間味を感じさせる所があって、そこが魅力的に映るんですよね。

 あと、世界観を通じて感じたのは、「どれだけ退廃しても、人間って意外としぶとく生き続けるものなんだなあ」と。水が枯渇したわけではないので、生きる術は閉ざされたわけではないんですけど。それでも、セレンとの様々な人達との交流を通じて、退廃した世界で生き続ける、人間の“たくましさ”みたいなものがひしひしと感じられました。