SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

勇者症候群

[著者:彩月レイ/イラスト: りいちゅ/電撃文庫]

 最終的には、『勇者化現象』を与えている『女神』とは一体何なのか? の謎や疑問点に立ち戻る。これまでは勇者を殲滅する事が精一杯で、そこまで考えを巡らせる余地がなかった、あるいは最初から「勇者化や女神の存在意義など解いても意味がない」と思っていた所に、カグヤが『変化の新風』を送り込んだと言った感じだったでしょうかね。

 殲滅から解除へ、勇者の心に訴えかけて『元に戻す』所に新たな可能性が湧き上げって来るような、極限状態の中で非常に熱い展開だったなあと思いました。

 しかし、一旦は沈静化したものの不安要素は多く残された印象で。特に、カグヤやアズマの中に『残されたままのモノ』が今後どんな影響を及ぼすのか、と考えるとかなり心配ですよね。カローンのメンバー達にもその素養はあるようだし、『勇者を元に戻す』方向での進め方で、今後何が起こるか分からない状況なのは大いに気になる所です。

公務員、中田忍の悪徳3

[著者:立川浦々/イラスト:楝蛙/ガガガ文庫]

 とにかく衝撃が走ったのがラストの展開。中田がここまでアリエルの特殊性を隠しまくっていた努力の成果は、割と実っていたように思えていたんですよね。要するに、彼が絶対的信頼を寄せている数人以外の外部には、完璧に情報漏洩は遮断出来ていただろう……と。

 でも、このラストの状況によって、中田の努力をあざ笑うかのように根底から覆されてしまった気持ちになりました。詳細は次に持ち越しでまだハッキリ分かっていないんですが、無理矢理良い方に捉えるなら『アリエルの実態が明らかになるかも知れない』で、悪い方は当然『中田がアリエルを匿っていた事が公にバレる』となる。

 正直、アリエルの正体についてはそろそろ知りたいと言えば知りたい所なんですけど、一方で中田のこれまでの努力の崩壊を見たくはないしなあ。一体どうなるんだろうか……?

既刊感想:

公務員、中田忍の悪徳2

[著者:立川浦々/イラスト:楝蛙/ガガガ文庫]

 『中田忍・観察物語』と言っても過言じゃないくらいの、主人公・中田忍激推し物語だと思うんですよね。中田の『生態描写』徹底ぶりにもそれが感じられるものだと思います。

 堅物で小難しくて無愛想で回りくどい、でも“これ”と決めた事に対しては徹底的に誠実に死力を尽くして向き合おうとしている。その『対象』が、今の中田にとっては異世界エルフのアリエルだと言う事。

 相変わらず、アリエルと言葉が通じない歯がゆさは大きいですが、むしろそう簡単にはいかない『意思疎通の難しさ』みたいなものこそが、この物語の醍醐味なのかも知れません。真面目に試行錯誤しまくりながらも、何だかんだアリエルになつかれているっぽい中田との雰囲気はなかなかに良いものです。

既刊感想:

クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所 ~看板ネコ娘はカワイイだけじゃ務まらない~

[著者:五月雨きょうすけ/イラスト:猫屋敷ぷしお/電撃文庫]

 『異種族間恋愛&結婚』に対する、『肯定派』対『否定派』の問題に繋がって行くようなお話。舞台である実験都市ミイスでは、前提として『全て受け入れる』方針で作られた都市なので、実際の所は否定の入る余地はないはず。

 なんですが、ここに過去の『種族間戦争』の複雑な問題の火種がくすぶっている辺りが興味深い所で。今回の騒動も世に散らばる否定派の断片に過ぎなくて、今後も異種族間交流に水を差す問題が出て来そうだなあって予感も抱いたりしました。

 次への展開予想としては、アーニャが異種族結婚の『繫ぎ役』としての話がメインになるのか、それともショウやドナが気に掛ける都市外の『否定派』の介入問題がメインとなるのか、気になる所ですね……と言いつつも、実は一番気になってるのはアーニャ自身の恋愛や恋心だったりします。

負けヒロインが多すぎる!2

[著者:雨森たきび/イラスト:いみぎむる/ガガガ文庫]

 主人公の温水“だけ”が、相変わらず『思春期青春恋愛話』に全然絡んでなくて面白過ぎる。しかも『恋をした結果、恋に破れた系女子』には何故かやたらと頼られているのに、そこから一切恋愛感情に一切発展しない所が更に面白い。

 いやでも、温水にとっては悲しい事……なのか? よく言えば気兼ねなく頼れる、悪く言えば便利な雑用係的な扱いで、割とみんなが温水の主張を聞いてくれなくてただただ翻弄されっぱなしなもんで、「これじゃ恋愛感情も湧き起こらんよなあ」って具合です。

 これだけ失恋女子の問題と密接に関り合いながら、温水自身には恋愛感情の芽生えっぽいのがこれっぽっちも感じられないのは、妙に気になって目を引く所だなあと。

 話を聞かない女子の代表格こと八奈見とは、時折いい感じな雰囲気になったりもするんですが、それも完全に友達関係の空気感だし。今後変わって来るのかどうかは注目点のひとつかなと思います。

既刊感想: