SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

決して色褪せることのない夏の日々にボクは諦めきれない恋をした

[著者:ののあ/イラスト:ぷらこ/HJ文庫]

 読む前に抱いていたイメージは、迷いと葛藤と悲壮感と背徳感とで心の中がドロドロと煮詰まっている……みたいな主人公とヒロインの関係性でした。死別した兄の結婚前提で付き合っていた恋人の事が好き過ぎて、距離が近過ぎるが故に略奪してしまいそうな雰囲気がむんむん立ち上っていたので。

 ただ、まあその辺は妄想が先走り過ぎてたかなあ、と言った具合で。物語の雰囲気は想像してたよりも、もっとずっと明るかったです。

 元々の3人の関係が極めて良好だったのも影響していただろうし、セツシが海華を思う気持ちを亡くなった陽が後押ししてくれていたようにも感じられていたからでしょうかね。

 もしかしたら、生きている側にとって都合いい解釈になるのかも知れませんが、「でも、それでいいじゃないか」と思えるような結末でした。

箱入りお嬢様と庶民な俺のやりたい100のこと その1.恋人になりたい

[著者:太陽ひかる/イラスト:雪丸ぬん/HJ文庫]

 下町の自転車店の息子と世界レベルの大企業の社長令嬢の、天と地ほどの身分違いの恋愛模様。たとえ本人達が相思相愛でも、身分違いと言う理不尽な現実が関係を断ち切ろうと立ちはだかってしまう。

 主に令嬢である純奈側の世間の影響力の問題から、庶民である勇輝を受け入れられないと言う事実が、二人の恋愛の試練となっている。

 この手の展開って、主人公の努力と気合と根性と勢いで割と何とかなりそうなイメージだったんですが、この物語に関しては乗り越えなければならない壁が異様に高くて、勇輝の主張だけではどうにもならない絶望感を植え付けられたりもしました。

 ただ、純奈の両親が「身分違いで付き合っても将来的に不幸になる」と断言するのも、結構な説得力を持たせた言い分だったりしたんですよね。

 なので、半ば諦めかけていた終盤でしたが……諦めの悪い男がもがきまくって望みを掴んだ姿ってのは、とても格好良いものでした。

世界でいちばん透きとおった物語

[著者:杉井光/カバーイラスト:ふすい/新潮文庫nex]★

 あらすじや帯に『ネタバレ厳禁!』とか『予測不能の結末』とか見えてしまう時点で、どうしても「これはラスト付近に何か壮大な仕掛けがあるな」と気付いてしまうわけですが。でも、そう言う所も想定した上で、読み手の好奇心を的確に突いてくれていたのかな、と思いました。

 物語に関しては、タイトルとは大分雰囲気の違う、むしろ胸の内で何かが『ドロドロと澱み濁っている』ような、全く真逆の手応えを抱いていました。なので「これの何がどう“透きとおった”なんだろうか?」と半信半疑で探りを入れるように読み進めていました。

 この印象が、終盤の真相語りから、ものの見事に一挙にひっくり返ります。もうこれ以上はギリギリのラインなので何も言いません。ただただ『凄い小説に出会ってしまった』とだけ書き添える事にします。

ハズレ属性【音属性】で追放されたけど、実は唯一無詠唱で発動できる最強魔法でした

[著者:路紬/イラスト:つなかわ/GA文庫]

 もうタイトル見ただけでお分かりですね? はい、とっても分かり易い『追放ざまぁ系』でした。異世界転移転生とかではなく、付け加えてありがちな『俺つえ―無双』の雰囲気は案外控え目だった所はちょっと他との違いが見えていたかなあと言った印象です。

 主人公・アルバスを追放した、彼の父親とか言う存在がもうね、すがすがしいまでのどクズっぷりを見せ付けてくれて、後のざまぁ展開がもの凄く際立ってくれていたかと思います。

 ただ、アルバス自身の戦いは、特に終盤は圧倒圧勝楽勝とは行かない内容だったので、良い意味でガチガチのお約束からちょっとだけそれてくれた所に、見応えが感じられたかなと思いました。

 あとは、主にアルバス自身の出自や魔術の本質について謎や伏線が意外と多くて、結構色々と先を知りたい欲求が膨らんでしまいましたね。

新婚貴族、純愛で最強です2

[著者:あずみ朔也/イラスト:へいろー/GA文庫]

 アルフォンスとフレーチカの『ラブラブパワー』は、前回よりも控え目だったかも。

 と言うのも、新婚旅行なのにアルフォンスの双子姉が強制同伴で『家族旅行』っぽくなっちゃったり、今回の話の展開的に二人以外の別のカップルのラブラブパワーを見せ付けられる形だったので、まあ仕方なしと言った所です。

 全体的に、今後の行く先を定める前の、それぞれが持つ特異スキルの再確認をする為の内容だったような印象でした。それによって、『相手を思う気持ちが無限大の力を発揮させる』と言う事を改めて充分に感じられたかなと。

 あとは、次でもっとアルフォンスとフレーチカが見たいかなな、なんて思ったりも。まあ実際の所、フレーチカも少なからず『いちゃいちゃ不足』で不満は残っているでしょうからね。

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