SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

わたし、二番目の彼女でいいから。

[著者:西条陽/イラスト:Re岳/電撃文庫]

 一番好きな相手がただの『片思い』状態なら、別に二番目に好きな相手と恋愛してもいいんじゃないの? 一番の相手と付き合ってるわけじゃないんだから、特に不健全でも不誠実でも無いでしょ?

 ……って、最初の頃は思ってしまいますよ絶対に。徐々に徐々に、少しずつ空気がおかしくなって行く。なんかこう、じわりじわりと追い詰められ締め付けられて行くような感覚。ゾクゾクしました。

 桐島も早坂さんも橘さんも、恋愛感情が“暴走”していると言うか。どんな形で『本当に好きな相手』と接したいのか、3人とも自分自身を見失っているように見える。ホントに整理が付けられない程『ぐちゃぐちゃ』になってしまっているんですよね。

 あとはラストの台詞ですね。なかなか衝撃的で、どきつく胸に突き刺さりました。タイトルの“二番目”の意味が、こんな所にも掛かっていたのか、と。

 正直な所、訳分かんなくなってます。なんかほぐしようがない程に、ぐちゃぐちゃと混じり合っているようで。桐島がどんな選択をして、どのように展開して行くのか、今の所全然予想が付かないです。

公務員、中田忍の悪徳

[著者:立川浦々/イラスト:楝蛙/ガガガ文庫]

 第15回小学館ライトノベル大賞『優秀賞』受賞作。

 無愛想で仏頂面な公務員主人公・中田忍が、未知の異世界生命体『エルフ』と遭遇して、一体どんな行動を取るんだろうか? そんな疑問を抱きつつ、彼らしい常識外れな対処方法の数々を、ニヤニヤと眺めながら楽しむ物語なのかなと思いました。

 興味の大半を占めていたのは、中田忍と言う人間そのものでした。中田がどんな場面でどんな事を考え、どんな発言をしてどんな行動を起こしてみせてくれるのか。彼自身への興味は尽きませんでした。

 あとは、言葉の通じないコミュニケーション不能は実にもどかしいもんだなと。エルフ娘自体、そもそも終わった今でも正体が全く分かっていないせいか、意外に惹かれる要素が薄かったんですよね。

 まあエルフ娘の出自は気になる所ですが、現在の日本で中田達がどうこうやっても、何も得られない気がする。どうにか言葉が通じれば、そこから新たな交流の道が開けるのかも知れませんが。

 結局は「とにかくやっぱり中田だなあ」に落ち着く。この人間性、かなり気に入ってます。知れば知る程クセになる。もっと深みにハマりたいので、エルフ娘との更なる交流を楽しみに待っていたいです。

経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。 その3

[著者:長岡マキ子/イラスト:magako/富士見ファンタジア文庫]

 月愛と龍斗の交際。順調そうに見えて、まだどこかちょっとした不安定さが感じられる、そんな展開でした。「どこが?」と問われると、実際には漠然とした雰囲気的なものなのですが。

 互いの『理解』がまだ追い付いていない、知れば知るほど「まだ自分は相手の事がちゃんと分かってない」と思い、そこから不安に繋がって行ったのかも知れません。

 ただ、月愛も龍斗も、相手を好きだと思う気持ちに揺らぎは無くて。たとえ龍斗を諦め切れない海愛の介入があっても、月愛に男の気配があっても、お互い自分にとっての『一番』は何も変わらない。そんな所を見せてくれた所は良かったなと、安心出来ましたよね。

 もう大分安定期に入ったように感じられるのですが、ここから更にどう物語を進展させて行くでしょうね。海愛の件で若干の不安要素が残っている気もするので、そこを突いてくるのかどうか。

既刊感想:

カノジョの妹とキスをした。3

[著者:海空りく/イラスト:さばみぞれ/GA文庫]★

 これだけ破局と略奪愛展開を強く望んだ物語は、これまで無かったかも知れない。それも『爆発しろ』的な冗談交じりの弄りではなく、真面目に本気で心の底からそうなってくれと願ってしまう程で。

 個人的には、もうどうしようもなく晴香が嫌いなんです。話の流れ的に、そうなってしまうのも仕方ないと思ってます。終盤の晴香視点の語りがとどめの一撃で、「こりゃもうあかん」ってなりました。

 誰を最も責めたくなるか、と考えると、矛先がどうしても晴香に向いちゃうんです。時雨が「その恋愛感情は小学生で止まったままだ」みたいな発言事に対して、酷く的を射てるなと思わされましたね。

 博道は晴香に気を使い過ぎて、自分ばかりを責めて追い詰める。それを見ながら、何も分かってない無邪気な『好意』を押し付けられるもんだからたまらない。何もかもぶちまけて、もう時雨とどうにかなっちゃえよ! なんて事も言いたくなりました。

 次回が最終巻と言う事で。この泥沼最終形態から、一体どんな結末になるんでしょうね。皆が幸せになるのはもう無理だと思うので、せめて博道自身が納得のゆく選択をして答えを出して欲しいです。

既刊感想:

楽園ノイズ3

[著者:杉井光/イラスト:春夏冬ゆう/電撃文庫]

 言葉足らずで無自覚な口説き文句は反則だなあ、と先輩ヒロインズは思っていたはず。しかも、さりげなく「それ口説き文句」と指摘されただけでは素で気付けていない。そういうとこだぞ真琴よ。

 と言うわけで、新キャラ&後輩キャラ&ベース担当の新メンバー登場。名前は志賀崎伽耶。正確には、真琴が意見する前に、強引にねじ込まれたと言うか。もっとも、現メンバー達からは好意的に受け入れられたので、しっくりハマっていたんだろうなあとは思いました。

 その結果、ベース担当の真琴が弾き出される羽目に。とは言っても、真琴も皆も合意の上での決定。真琴にとっては、再びネット動画のソロ活動に身を置く事で、自分とバンドとの関わり方について、色々考える余裕が生まれて良かったんじゃなかな、と。

 伽耶の扱いに関して、真琴が決めた事には納得出来たかな? 考えた上での説得力もあったし。まあ真琴が今後も絡む期待を持たせたからには、また伽耶とも積極的に組んだ展開も含めて欲しいですよね。

既刊感想: