SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5

[著者:しめさば/イラスト:ぶーた/角川スニーカー文庫]★

 とにかく、「吉田と沙優が納得の行く形で、望んだ通りの結末に至って欲しい」と願うばかりでした。たとえ二人が(特に沙優にとって)どんな過酷な経緯を辿ったとしても、受け入れる覚悟で読み進めてました。「最後に幸せであってくれるなら」と。

 何せ沙優や彼女の兄・一颯の話を聞く限り、どう考えても母親にまともに話が通じるとは思えなくて。更に家族以外の吉田が介入する事で、どんな事態が起こってしまうのか。少なくとも穏やかに済みそうにない事は分かり切っていたので、踏み込むのに躊躇いましたよね。緊張感が半端なかったです。

 母親との再会シーンで特に強く感じたのは、『吉田と沙優と一颯の3人が揃っていなければ、乗り越えられなかった』と言う事。それぞれが母親に対して異なる接し方が出来た事で、前に進めたんじゃないかなと。特に一颯の行動や感情の描き方はとても良いなと思えました。本当に良いお兄さんだよね。

 最後に。結末に関しては、個人的には非常に満足でした。それは、最初に書いた『沙優と吉田にとって納得の行く望んだ結末』だったから。この結末の先の二人を想像しつつ、余韻に浸ろうと思います。

既刊感想:Each Stories

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 Each Stories

[著者:しめさば/イラスト:ぶーた/角川スニーカー文庫]

 過去の購入特典などに付属、掲載されたエピソードに、書きおろしを数点加えた短編集。初出は巻末に掲載されていましたが、本編のどの辺りに入るのかってのはハッキリとは分かりませんでした。もっとも、前後の流れはあまり短編エピソード影響は無いと感じたので、あまり気にせず吉田と沙優たちとのエピソードを楽しめていたかなと思います。

 ただ、3巻から読む期間が開いたせいか、一部ど忘れしていた事もありましたが。「神田先輩って誰だっけ?」とか「後藤先輩ってこんな吉田に未練たらたらだったか? て言うか、そもそも吉田の元カノだったっけ?」とか。まあ仕方ないですね……。

 沙優とのエピソードは、過去が明かされた今触れてみて、色々思う所はありましたね。特に家庭環境の件にうっかり触れてしまった時とか。読みながら「すべてに決着が付いた最後は、またこんな平穏な二人であって欲しい」と心底願ってしまいました。

 個人的に好きなエピソードは『小説』と『コスプレ』。どちらも同年代で沙優を精神的に支えてくれる、あさみが絡んだエピソード。なので、どうやら彼女自身の事も気に入っているみたいです。

既刊感想:

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。4

[著者:しめさば/イラスト:足立いまる/角川スニーカー文庫]★

 前巻読んでから2年以上間が空きました。「どひゃー」って心の声を発しつつ。吉田と沙優以外の登場人物の記憶は少々曖昧でも、割と分かり易くて記憶にも残り易いお話なので、久々に読みふけりながら「雰囲気は意外と覚えているもんだなあ」と。

 そんな久々の続き。沙優の過去についての告白は初めて、だったかな? どうしても、吉田には話さなければいけない、隠してはいられない、打ち明けなければならない局面。相当に覚悟を決めた、どぎつい過去回想の吐露でしたが、これまで秘めていた全てを打ち明けた事で、より一層吉田への信頼や想いを感じ取る事が出来たかなと思いました。

 あとは、『他人の家庭の事情に踏み込む事は非常に困難』だと思い知らされる。その中で、何より吉田自身が「沙優の為にどうしたいのか?」と、自身の内にも近しい人達にも幾度も問い詰められる。

 吉田の迷いと葛藤、これらの描写も凄く良かったです。色んな人に後押しされての決断。果たしてどうなるか……先を追うのが本当に怖いです。でも、その先に必ず幸せな結末が待っていると信じたい。

既刊感想:

カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています4

[著者:御宮ゆう/イラスト:えーる/角川スニーカー文庫]★

 真由がメインの回。これまでより、更に彼女の内面の深い部分まで描かれています。家庭環境から過去の回想を経て、彼女の『恋愛観』が形成された現在に至るまで。普段悠太にウザ絡みしている様子からは想像出来ないくらい、真由自身でも持て余す程に複雑な想いを抱えている事に驚かされました。

 この物語って、真由も彩華も礼奈も、単純に恋愛感情だとか恋人関係だとかで括れない『複雑さ』を、物凄く抱え込んでいるんですよね。この要素に関しては、個人的には感情移入度が高くて凄く好きなんですけど、大分難儀なので追っているとまあ疲れますよね。

 悠太との関係、それぞれどうなるんでしょうねえ。正直先が読めません(先への期待感が高いので良い方の意味で)。『恋人関係』で考えるなら、現状悠太とよりを戻した礼奈が最有力なのかなあ?

既刊感想:

初級魔術マジックアローを極限まで鍛えたら2

[著者:ぺもぺもさん/イラスト:マシマサキ/モンスター文庫]

 一点特化の『マジックアロー』を、極限まで使いこなせるようになったアルベルト。でも、彼自身は決して無敵でも不死身でもない。その事実を思い知らされる内容でした。一見無双しているようで、実際には瀕死にもなるし劣勢にもなる。いくらマジックアローを極めても、『アルベルト一人だけではどうにもならない』局面に、幾度も立たされる。

 そんなアルベルトのマジックアローに、度重なるローラの助力が加わり、初めて難敵に対して最大限の力を発揮出来ている。この辺りの展開や見せ方が非常に面白くて良いなあと思いました。旅を共にする事で増して行く二人の絆、実に良いものでした。

 アルベルトは新たな能力開花で、更に父とのわだかまりも完全に解けて、流れが良い方へ向かっている。一方で、ローラは内に『災厄の魔女』を秘める事となり、ここは特に不安材料で気になる所です。

既刊感想: