SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

異世界転移、地雷付き。2

[著者:いつきみずほ/イラスト:猫猫猫/ドラゴンノベルス]

 ナオ、ハルカ、トーヤの主人公3人組、前世で特に親しかったナツキとユキを探す為に街を旅立つ。ハルカが言っていた『街を出る』と提案した理由はこれでした。

 前巻のサイドエピソードにナツキとユキが登場していたので、3人と浅からぬ縁だとは思っていましたが。安定生活を一旦放ってまで探し出したいと言うのは、クラスの中でも特に余程合流したい存在なのかなあと感じさせられました。

 そもそもこのクラスの連中、『地雷チートスキル』を嬉々として取得している愚かな奴らが多いようなので、なるべく近付きたくないと思っているわけで。ナツキとユキがそんな愚かな連中の仲間入りしてるんじゃないか……と、心配して起こした行動だったのかも知れませんね。

 結果としては、ちょっと危ないながらもセーフな状況でした。探し当てて再会するまで、もっと苦労するかと思っていたんですが、案外順調で早い再会だったかなと。合流して5人になってからは、最初の街に戻って『拠点探し』=賃貸物件巡りな展開へ。今回は、屋外での依頼遂行みたいな冒険者らしい行動はあまりなかったです。

 それよりも、街中に留まっての『日常活動』風景の方が多い印象でした。ナツキ、ユキと再会してからは波乱も特になく、全体的に割と穏やかな雰囲気に満ちていました。新たな展開への準備段階、みたいなもんでしょうかね。まだ拠点探しは片付いていないので、次はその辺りから始まるのかな。

既刊感想:


魔王学院の不適合者9 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~

[著者:秋/イラスト:しずまよしのり/電撃文庫]

 サーシャとミーシャの前世と転生に関わるお話。そこにアノスの失われた記憶の残りと過去が絡んでゆく展開。最初の方で発覚するんで言っちゃいますけど、サーシャ=破壊神アベルニユーでした。まだ見ていない6つ目の創星エリアルの夢には、創造神ミリティアによって封じられた“アベルニユーに関わるアノスの過去の記憶”が眠っていたわけです。

 問題だったのは、何故ミリティアがその事を封印したのか? 過去の事実を追っている限りでは、むしろアノスにとってもサーシャにとっても“記憶に残っていた方がいい出来事”に見えていた。それなのに、ミリティアがあえてアノスの記憶に残さなかった所に、一体どんな理由が潜んでいるのか?

 今回は、主にその辺りを明らかにしてゆくような内容でした。この真相に辿り着いた事によって、アノスが失っていた2000年前の記憶もほぼ戻ったと見ていいんでしょうか。もうアノスの過去の記憶で探るべき不明点もほとんどないように感じますが、どうでしょうね。

 ともあれ、今回の件が解決した所で即座に次の展開へと続く。向かう先の『神界』とはどのような領域なのか? それから、ずっとアノスの内に聞こえている『声』の主の正体は? 息つく暇もなく飽きさせない展開で面白い。続きが非常に気になります。

既刊感想:4<上>4<下>


十年目、帰還を諦めた転移者はいまさら主人公になる2

[著者:氷純/イラスト:あんべよしろう/MFブックス]

 『九年間、前の世界への帰還を求め続けていた』事や『必死に帰還方法を探し続けていた』事、それから『十年目で諦めて異世界永住を決意した』事など。物語の展開上、あんまり重要ではなくなっていたのが、ちょっと惜しいと言うかもったいないと言うか。

 まあ「この設定をどう活かして欲しいか?」と問われても、トールは既に前の世界帰還に見切りをつけているので、どうにも活かしどころがなさそう……と思うのが正直な所なのですが。あってもなくてもどちらでも話が成立するならば、トールには「俺は九年間必死で頑張った」「でも無理だから諦めたんだ」とか、頻繁に主張してその事実を忘れさせずに思い出させて欲しいものです。

 あとは読みながら「いまさら帰還方法の手掛かりががひょこっと見つかんねえもんかなあ」と、ついつい思ったりしてしまいます。ユーフィ、メーリィ姉妹に囲まれて楽しそうで生活も安定していて強さも規格外だから向かうところ敵なしだし、そんな順風満帆を崩す波乱を欲しているのかも知れません。

 決して退屈なわけではないんですけどね。『魔機車』なる乗り物を手に入れたり、噂の『吸血鬼』とお近付きになってみたり。この三人の能力値だからこそ出会える経験なのかなと。この先も退屈せず色々と楽しませてもらえそうですね。

既刊感想:


厄災の申し子と聖女の迷宮1

[著者:ひるのあかり/イラスト:桜瀬琥姫/ドラゴンノベルス]

 主人公・シュンが異世界住民、双子ヒロイン・ユアとユナが異世界転生者。一般的に普及している異世界転移・転生モノとは逆のパターン、みたいになるのかな? シュンが転生者側の事情に触れる事で、彼自身がレベルやHPやMPのような『数値の意味』を理解して、徐々に適応しながら強さを得て行く、と言った展開。

 なぜ転生者達が転生させられたかについては、よく分かっていない。神の少年の言動から察するに、ただ単に原住民と転生者達を使って“遊んでいる”風にしか見えませんでした。シュンに神の少年が見えている事は例外中の例外なので、そもそも他の人には神が仕組んでいる事にすら気付けないわけですが。

 神の思惑通りに上手い事立ち回れば力や富や名声が手に入り、神の機嫌を損ねるような拙い立ち回りだと破滅へ一直線。踊らされているけどどうにもならない……何となくそんな理不尽な空気も感じられました。

 シュンの目的は、今の所“ダンジョン探索そのもの”です。定められた期限を生き抜いてダンジョン生活の任期を終える、それだけの為の行動。特に何か求めているわけでもなければ、強さを欲しているわけでもない。

 でも、結果的にはユアユナと共にどんどん強くなっている。これからどう展開してゆくかは詳しく見通せませんが、しばらくはダンジョン探索を続ける事による“新たな発見”が楽しみとなりそうな感じです。


刹那の風景1 68番目の元勇者と獣人の弟子

[著者:緑青・薄浅黄/イラスト:sime/ドラゴンノベルス]

 病弱なまま現世を去り、勇者として異世界召喚された二度目も病弱で死と隣り合う人生。主人公・刹那の境遇で一番きついのは「なんで僕ばかりこんな目に……」と、憤りの感情をあらわにする気力すら最初から備わっていない所。寝たきりのまま、いつ命が尽きてもおかしくない状況が延々と続いて行く。まさに生き地獄。

 そんな刹那の『三度目の人生』の物語。“三度目の正直”という表現が、こんなにもしっくりくる物語はないなと思いました。それ程、これまでの刹那=セツナが報われなさ過ぎだったと言う事でしょうかね。

 新たなセツナの人生の出発点は、過去の勇者・カイルの『能力譲渡による継承』みたいな感じでした。この辺は、ちょっと不明点もあったりするんですよね。そもそもカイルの過去自体が結構謎に包まれているので。どうやら何らかの『条件』を満たすまでは、セツナにも覗けないような仕組みになっているらしいです。

 この、セツナがかつての“勇者の過去”を紐解く事が、あるいは物語の謎を解く鍵になって行くのかも知れません。特にこの世界と『転生勇者』との関りについては、結構キナ臭い雰囲気もあるので気になる所です。まあ、セツナにはあまり関わって欲しくない気持ちが大きいですけどね。