SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました9

[著者:ざっぽん/イラスト:やすも/角川スニーカー文庫]

 『もうひとりの勇者』ヴァンの対処法について。枢機卿に植え付けられた『正義』を曲げない、曲げる事を知らない、曲げる術を持たない、異常性に満ちた存在。レッド達は、これを『交渉』と『説得』によって変化させようとするわけですが……。

 これまでヴァンを見て来た限りでは、力でねじ伏せるしか止める方法は無いと思ってました。どれだけ間違った考えだと指摘しても、それがなぜ間違いなのか理解出来ないから。ヴァンを言葉で説得するのは限りなく不可能に近い、と感じていました。

 鍵を握っていたのは、やはりレッドの『導き手』の加護でした。ヴァンと言葉を交わす内に、明らかに内面に変化が生じ、迷いや戸惑いを抱くようになってましたからね。さすがとしか言いようがない。

 変わりゆく勇者ヴァンとの付き合いは、もう少し続きそう。レッドが彼の前に立って行動し、さらに言葉を交わす事で、何が変わって行くか。ヴァンは明確な答えに辿り着けるのか。見届けたいですね。

既刊感想:Episode.0

僕たちはまだ恋を知らない ~初恋実験モジュールでの共同生活365日~

[著者:鶏卵うどん/イラスト:SuperPig/MF文庫J]

 男子1人に女子5人の閉鎖空間生活。火星移住を見越しての実験とかなんとか。世間に公表されているし、生活環境の優遇措置もあるので、後ろ暗い所はないはず。研究者側は色々伏せていそうですが。

 基本的に、参加者たちは割と気軽な姿勢で臨んでいる(ように見えた)ので、息苦しさや閉塞感、命の危険性などは特に感じられませんでしたね。思ってたよりも、結構気楽に眺めていられました。

 話の流れによっては、ハーレム展開構築も容易いかな? と思ってましたが、全っ然そうなってくれませんでした。光に対して、それぞれ秘めた想いは抱いてそうですけど。今の所はコメディなノリの方が強いんですよね。女の子達も、恋愛感情よりクセが強い変な性格の方が強調されてましたから。

 でも、計画による閉鎖生活はまだ始まったばかり。冒頭の光の様子から察するに、最高の結末は迎えられたみたいですよね。そこへ至るまでの皆の様々な経験を、楽しみながら追って行きたいですね。

お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について2

[著者:桜木桜/イラスト:clear/角川スニーカー文庫]

 由弦と愛理沙の一対一の安定した恋愛模様。安心して見ていられるかと思っていたら、色々と面倒な事情が絡んでいるなあ……ってのが今回の手応え。

 名家の政略結婚染みた、父親たちの裏の顔の様子って……どうなんでしょうね? あくまで由弦と愛理沙の婚約とは別の仕事上の関係、とは言っていますが。由弦の思い通りにさせるかどうかと考えると、なんとなくそうはうまく行かない不穏さも見え隠れしてるんですよね。

 そもそも由弦と愛理沙の婚約が“偽り”である事からして、決して正常な恋愛関係状態とは言えないんですけど。ただ、複雑な事情の付き合いの中で、互いの恋愛感情が『本物』になりつつある様子も見られました。この進展はかなり嬉しい所でしたね。

 惹かれ合っているのは間違いない。でも、いずれは『婚約解消』する事を前提として始まった付き合い。偽物を本当に変えるにはどうすればいいか。何より、由弦と愛理沙が『本物の関係』にしたいと思いながら、未来を変えて行こうとするのかどうか。

既刊感想:

ワールド・ティーチャー 異世界式教育エージェント15

[著者:ネコ光一/イラスト:Nardack/オーバーラップ文庫]

 大陸間会合から始まった、サンドール王国での長編エピソードもいよいよ大詰め。サンドール滅亡を掲げるラムダと魔物の大群と、迎え撃つシリウス達との最後の大決戦。大切な人達や、かつての仲間達が集い、力を合わせて強大な敵と立ち向かう。まさに『総力戦』に相応しい見応えのある展開でした。

 まあでも、やっぱりライオル爺ちゃんが頭一つ抜け出て目立ってるんですよねえ。良く言えば絶大な戦力、悪く言えば制御不能の暴走ジジイ。敵味方問わず、突飛な行動で困惑させては存在感の大きさをまき散らしてます。とても厄介な人ですが、眺めていて自然と目が向いて引き付けられる、魅力的な人物だなあ、と改めて思いました。

 あと今回見せ場を作っていたのは、エミリアとレウスの姉弟。シリウスの助力がなくとも、己の力で強敵に打ち勝ってみせる! と言う心の底からの強い信念を感じました。一人の力ではなくて、信頼出来る仲間に背中を預けられるからこそ立ち向かって行ける。そう言う様子が凄く良かったですよね。

 そして最後に残ったのは、シリウスとラムダの一騎打ち。まだ続きます。ラムダは奥に引っ込んでばかりで、あまり本心を語る機会もなかった気がするので、このシリウスとの戦いの中で、最後にもっと感情的な部分も見て見たいですね。

既刊感想:『ワールド・ティーチャー 異世界式教育エージェント』感想一覧

王様のプロポーズ 極彩の魔女

[著者:橘公司/イラスト:つなこ/富士見ファンタジア文庫]

 主人公とヒロインが『合体』して世界の危機を救う。詳細を省くと色々誤解を招きそうな表現ですが、それ程間違った解釈ではないかなと思います。

 最初に『300時間ごとに世界の危機が訪れる』とありましたが、今回この件はあまり密接に絡んで来なかったですね。なので、出現する『異形』を、まだ多くの謎を含んでいるような印象でした。

 おそらくこの要素は、後半で明かされた事実に直結していると思うのですが……そちらも現状で真偽を確認する術はないですからね。今はただ、無色が聞いて得た“核心”を信じて進むしかないのかな。

 あと気になったのは、『何故無色が選ばれたのか?』ですね。一見偶然のようでもありますけど……無色自身の中に“彩禍に選ばれるべき何か”が、もしかしたら眠っているのかも知れません。

 とにかくまだ始まったばかりで、触れたくても触れるべき事が少ないと言った具合で。今回控え目だった、繰り返される世界の危機と異形について、次でもっと語られるんじゃないかなと期待してます。