SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

転生少女はまず一歩からはじめたい3 ~魔物がいるとか聞いてない!~

[著者:カヤ/イラスト:那流/MFブックス]

 サラが登場人物中でもっとも精神年齢が高いのでは? とか読みながら思ってたけど、そういや転生前の寿命年齢を考えると的外れなわけでもないのか。つまり言いたいのは「大人げない大人や、大人な態度になり切れてない大人が多いな」って事です。

 どうにも日常生活的な所で常識に欠けるポンコツ大人が結構いるようで、「サラやアレンに気を遣わせてんじゃないよ、まったく」と言いたくなる場面もありました。やれやれ。まあ、子供たちはしっかり者で強くて常識人で身をわきまえているので、大人達より余程安心して見ていられるのは良いですけどね。

 今回はネリーとの再会後からのお話で、『魔の山』の管理を後任に引き継いでローザの街を旅立つ展開になります。が、行った先の街でも騒動多発で一向にネリーとの生活が落ち着かない。見ている側は退屈せずに済んでますけど、ここでもまたサラが大人の事情で理不尽に振り回されたりするので、ちょっとイラっと来たりもしました。まあ結局サラが有能さを見せ付けて黙らせてくれたお陰で、最後はスカッと出来ました。

 次はネリーの両親が住む街へ向かう事に。今度は平穏であって欲しいけど……どうなるでしょうね。あと、サラの成長の方向性と言うか、今後何になる為にどこを目指すか? みたいな部分に深く踏み込んで行きそうな雰囲気もありました。この辺りの様子も気になる所です。

既刊感想:


刹那の風景2 68番目の元勇者と竜の乙女

[著者:緑青・薄浅黄/イラスト:sime/ドラゴンノベルス]

 今回は大きく分けてエピソードがふたつ。ひとつは、タイミング悪く獣人弟子のアルトを虐待している誤解を受けて、割と理不尽に行きがかりの獣人コンビに急襲されてしまうエピソード。

 これはセツナ視点で見てると、事情をロクに聞きやしねえわ勝手について来ながら殺気立てて挑発してくるわ、もうイラつきが収まりませんでしたよ。それでもセツナが相手の挑発に一切乗らず、冷静沈着に対応してくれたお陰で、獣人コンビの敵対心も和らいでくれてムカつきも収まってくれましたけど。

 ただ、理不尽な目には合ったものの、結構この辺りは頭を沸騰させつつも展開が面白くて夢中に読みふけってしまいました。違う価値観を持つ相手が、歩み寄って認めてくれる瞬間っていいもんだなと。敵意と殺意を向けられていた分だけ、誤解が解けてセツナの本音が受け入れられた事が嬉しかったですよね。

 もうひとつは、依頼をこなす途中で不慮の事故中で出会った『竜の乙女』に、セツナが勢い付いてプロポーズしてしまうと言うエピソード。一目惚れとは言え「いきなりかよ!」と思わず突っ込んでましたよ。

 でも、これはどうもセツナが受け継いだ『カイルの記憶』の影響が深く関わってるっぽいんですよね。眠っていたカイルの激情が引き金になった、ようにも見えましたが……まだ明確には分かりませんでしたね。

 セツナと竜の乙女・トゥーリ、色々なものが複雑に絡み合ってしまったままの関係がどうなって行くのか。常に近くに居られないのが分かっているだけに、今後二人の絆をどう描いてみせてくれるのかが気になります。

既刊感想:


田中家、転生する。3

[著者:猪口/イラスト:kaworu/ドラゴンノベルス]

 『皇国』が転生前の日本にそっくりな所は、結局根本的な原因ってのはよく分からないままでした。将軍だの天皇だのって地位が存在していたり、忍者を暗躍させていたり、どう考えても無関係ではなさそうなんですけど……。過去に田中家以外に日本からの転生者がいて、その知識を元に国が興されたって事なんでしょうかねえ。

 まあ、この物語にとって、もっと正確に言えばスチュワート家=田中家にとって、皇国の成り立ちや歴史的背景なんぞハッキリ言ってどうでもいいんです。田中家は日本食そのものな『皇国の食材』を心底欲しているだけなんです。何はともあれ「米! 米! 米!」です。

 その辺りの心事情が現地の人達には想定の範囲外で、それが「こいつら何言ってんだ?」とはならず、「我々には思い浮かびもしない名案!」と何故か誤解で称賛されてしまうのが凄い所で恐るべき所。

 エマの好感度も、本人は全く意識していないのにとどまる所を知らず爆上がり状態が続いています。とうとう『聖女』なんて呼ばれる始末。エマは自分の欲望を満たす為だけに動いていると言うのに、どこまでも無自覚に無意識なまま好転してしまうんだなあ……と、ついつい遠い目をしながら眺めてしまいました。

 次は、おそらくスチュワート家総出で皇国遠征になるのかなあと。魔物による危機から皇国を救う手立てに心当たりがあるようで、今度は皇国にまでスチュワート家とエマの名声が轟く事になるのかも?

既刊感想:


厄災の申し子と聖女の迷宮2

[著者:ひるのあかり/イラスト:桜瀬琥姫/ドラゴンノベルス]

 『迷宮人』と言う、迷宮内で死んだ人間がモンスター化した存在が今回の敵対者。彼らがどの程度の勢力で、迷宮探索者達との戦力差がどれくらいなのかは、あんまりよく分からなかったです。その辺りは結構曖昧な手応えで、ただ極端にどちからに戦力が偏っているわけでもなさそうでした。

 少年神の思惑によって、丁度良い戦力差でバランスが保たれているのかも知れません。なにせ迷宮内で探索者と迷宮人とで『戦争イベント』を起こさせるような狂った神ですから、娯楽として人間もモンスターも等しく駒のように扱っているんだろうなと。

 とは言え、シュンとユアとユナの能力アップには物凄く協力的なので、シュンとしては少年神は敬う存在として、決して邪険な態度にはならず好意的に接しているみたいですけど。少年神としても、いつも想定の上を行かれるので予定が狂って歯噛みしてはいるものの、退屈させない存在としてシュンを認めている所はあるみたいです。

 この奇妙な関係、迷宮脱出条件を満たすまで続いて行くのかどうか。また、そうなった時に少年神はシュンを素直に手放して脱出を認めるのかどうか。まだまだ先の話ながら、両者の関係性はちょっと注意して追ってみたい所です。

既刊感想:


極振り拒否して手探りスタート! 特化しないヒーラー、仲間と別れて旅に出る2

[著者:刻一/イラスト:MIYA*KI/ドラゴンノベルス]

 ただひたすらに、ルークひとりで迷宮都市探索を黙々とこなしてゆく。今回、ストーリー上の進展はほとんどなかったと言っていいのかも。

 でも、「迷宮探索にのめり込んでるなあ」って強く感じられる内容でもありました。ルークひとりでルーク視点で語っているので、彼の経験をそのまま追体験しているような、そんな印象を抱きました。

 ルーク自身の能力や迷宮の内外での事で、何か気になる事や疑問があれば、とにかく納得出来るまでとことん突き詰めるみたいな行動だったでしょうかね。『試行錯誤』『実践』『検証』を繰り返し繰り返し続けて、ルークが手にしたい『真理』に近付いて行く。言ってしまえば非常に地味で淡々とした作業ながら、読みながら思わず彼に同調してしまうような部分もありました。

 能力の数値化が存在しない状況なので、特にルークの身体能力の成長に関しては手探り感が強い。そんな曖昧さも、この物語の良さであり持ち味なのかなと思いました。

既刊感想: