SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

安達としまむら5

[著者:入間人間/イラスト:のん/電撃文庫]

 夏休み突入で会う時間が減って、他の女(樽見)と仲良くしている(ように見えた)のを目撃して、安達のヤンデレ気質が爆発。暴走がついにしまむらへ直接向けられる。

 ……と、まあそんな分かり切った安達の本性などさておき。今回はやっちまった安達の視点から、『しまむらの本質』の方がこれまでよりも鮮明に見えていたように感じられる内容でした。

 一言で表すなら『中立』でしょうかねえ、イメージとしては。流れゆくに身をまかせ感情に波風を立てない、来るものは拒まず去るものは追わず、とにかく何事に対しても「まあいいか」な精神。とにかく掴み所が無い印象で、安達や樽見やしまむら妹が好意感情が激し目な分、余計にしまむらの方が淡泊でさめている風に見えてしまいます。

 この『温度差』はどうにも容易く埋まらないと思う。しまむらと彼女を慕う人達の『距離感』は、これからどうなって行くのでしょうね。

既刊感想:

薬屋のひとりごと11

[著者:日向夏/イラスト:しのとうこ/ヒーロー文庫]★

 西都編の続きの続き。これまで出て来なかった玉鶯が表舞台に登場。と同時に、何の為に任氏を西都に呼んだのか、そして玉鶯自身がどんな思惑を抱えていたのか、その全てが判明します。今回は、もう玉鶯とその家系と過去の因縁が主役のような感じでした。

 中盤以降は、猫猫や任氏をそっちのけで玉鶯の策略が中心に動いてましたから。玉鶯に関するこれまで散りばめて来た伏線とその回収、終盤での畳み掛けるような怒涛の収束展開はお見事でした。非常に苦くて重い複雑な『血縁関係と為した罪』に関する話で、かなり奥深く絡み合った内容に思わず魅入ってしまいました。

 まあ、前述のように猫猫と任氏の立場は完全に“蚊帳の外”だったわけですが、多分この状況だと次は嫌でも当事者的立場に置かれる事になるでしょう。となると、まだ西都編は続くのでしょうかね。むしろ中央よりも、こちらの方がメインの舞台に移り変わりそうな雰囲気もありますが、さてどうなる事か。

既刊感想:10

エンジェル・ハウリング7 帝都崩壊(1)―from the aspect of MIZU

[著者:秋田禎信/イラスト:椎名優/富士見ファンタジア文庫]

 奇数巻のミズー編。帝都潜入で、ミズーは自分自身が成し遂げるべき事を心の中で固めつつ動いて行く。でも、ミズーの行動を見ている限りでは、「成し遂げたいと考えている事は本当に本心からのものなのか?」と、疑問や迷いや葛藤をまだ多く抱えているようにも見えました。

 と言うのも、ミズーらしくないと言うのは正しいか分かりませんが、帝都に入ってから特に迂闊な行動や判断が目立っていたので。「ミズーどうした? 大丈夫か?」なんて不安視もありました。

 まあ、相変わらず謎や伏線を盛り込んだ描き方をしていたんですが、精霊アマワと契約者達との8年前の経緯について、ようやくベスポルトの口から詳細が語られました。とは言え、「それで結局どうなるの?」って疑問は残り続けています。

 そしてミズーが追い求めるアストラの存在が、更に混迷の極みに誘う事に。いやこれ、ミズー編は次でラストなんですよね? ちゃんと収束するのかな……色々見え始めて面白くなって来たけど不安も募る。

既刊感想:

ウィザーズ・ブレインV 賢人の庭<上>

[著者:三枝零一/イラスト:純珪一/電撃文庫]

 シティメルボルン跡地にて。主にシティモスクワとシティマサチューセッツの連合軍対魔法士と言う構図で、そこから更に様々な相関関係が複雑に絡みつつ展開して行くエピソード。時系列的には、真昼と月夜と錬の通信会話から察するに、前巻とほぼ同じ時期に繰り広げられているようでした。

 シリーズが進むに連れて、大多数のシティの人口の命と、マザーコアとしてシティを支える人造魔法士の命と、この重みの差や誰にとってどんな意味を持つのか? などについて、どんどんより深みを増して描かれているように感じられました。

 特に今回の騒動の根幹はここにあるわけで、興味深いのは魔法士同士であっても必ずしも共闘とは行かない所で。イルとディー、真昼とサクラ、サクラとセラ、セラとディー、色々な因縁と複雑な事情を抱えつつ、果たしてこのエピソードの終着点でそれぞれがどんな『答え』に行き着くのか。

既刊感想:IIIII、IV<上><下>